連作

□X 罪を罪とも思わないのではなく、僕が其処に在りたいと想う、純で粋なる願いであって
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――僕はいったい何故ここにいるのだろう
誰の許しを得てこの場所にたっているのだろう




かつて“僕”は言った


『好きだの愛だの馬鹿馬鹿しい』


その言葉は紛れもなく“僕”にとっては真実だった


信じることが出来ない人間には愛は語れないと誰かが言っていたけれど
“僕”は誰かを信じることが出来なかったからその言葉を吐き捨てたのだと思う



そのたった一言が、今も僕の心を縛り付けている



今どれだけ僕が愛するあの子に愛を囁いたとしても
あの子にとっての僕は、
愛なんて馬鹿馬鹿しいと言い捨てたあの時の“僕”のままだから



ほら今だって、
目の前で泣きそうな君を慰めるのを躊躇うほどに
その事実が僕にのしかかる




「……黒鳥さん、」




僕がやっとのことで紡ぎ出した言葉も君に届いているのかすら怪しくて
目の前で震えている君を抱き寄せたいと願っても、一言あのセリフを引き合いに出されたら僕はもうおしまいだ



あの言葉は“僕”の気持ちであって、今黒鳥さんの目の前にいる僕自身の気持ちではないと説明したところで
どうして彼女が理解してくれようか?

この僕はいつだって君を思っているのに
“僕”の言葉のせいで、伝わらないだなんて信じてくれるだろうか?




「………大形くんは」


今でも、馬鹿馬鹿しいと思ってるんですか?


瞳に涙を浮かべた黒鳥さんはそう続けたけれど
僕には言えない

様々な否定の言葉は生まれてくるけれど
どれも君を納得させることなんて到底できやしないんだ




「僕はいつだって変わってないんだねぇ」



ぬいぐるみを手に持つアニメ声の電波系少年である僕はいつだって変わってない
変わっているとしたら黒魔法使いである“僕”だ



「その質問は“僕”に対する質問なんだねぇ」


「僕に聞くのは見当違いなんだねぇ」



ごめん黒鳥さん
こんな言い方しかできなくてごめん
君を苦しませてごめん



その罪は僕が全て受け止めるから
どうか身勝手な“僕たち”がそばにいることを許してくれないかい?





(だけど“僕”は思うんだ、)



(もう時効じゃないかい?)







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