連作

□XXX 指先から零れる熱だけを掻き集めて、縋り付く涙が溢れてしまって
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逢いたいな、なんて乙女な思考をこのわたしが持つようになるなんて思わなかった
ただあなたと毎日一緒に過ごしていた時間がこんなにも恋しくて


わたしが招いた結果なのは分かってる
自業自得だわと自虐的になることだってある
だけどこんなのってあんまりだわ





ブラックデーにまつわる騒動の後、当然黒鳥さんは人間界に帰っていった
久しぶりに会った黒鳥さんとギュービッドは相変わらずの様子で
もっと久しぶりに出会った大形は随分イメージが違っていて
彼がしでかした多くの事件はわたしも知っていたけど、実際彼の姿をみてみるまではにわかには信じられなかった


そんな彼でさえ赦されて、人間界に戻ることが出来るのに
わたしの罪は赦されることはなく
愛しいあの人に会える日なんてきっともう来ない



――“ユニフォームを着て団扇を持っていない”小島くんなんて、わたしはもう直接目にすることは出来ないのに、


―――小島くんが“いい人”なのは始めからよ
そんなのずっと知っていたわ



彼に対する様々な思いが渦巻いていて
でもその気持ちのベクトルは全て同じもの



――あなたを思うこの恋心はいつまでも衰えることはないのね



そんな事を考えながらわたしの持っている彼のたった一枚の写真を見てるといつも自然と熱いものが頬を伝ってしまうから
わたしはそれをいつも零さまいと手でうけとめなければいけなくなる




わたしの持つ彼の存在を確かに示してくれるもの
そんなものをわたし自身が台無しにしてはいけないから



あなたに逢えない今、わたしはこんなにも小さなものに縋るしかないのよと
笑顔の彼に向かって呟いた




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