連作

□XXXXX そう。願う事だけ。それが僕に残された只一つのほんとう
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きっかけは些細な事でした


彼女のお家が有名な華道の家元だということを知って興味を覚えたんです


僕はお花が大好きです
いえお花も、と言った方がいいでしょう
この世界は素晴らしい自然に囲まれています
僕はそんな自然のすべてが大好きで出来る限りそれを守りたいと思っています



「古島くんらしいね」



控えめな笑顔で楠木さんは微笑みます
クラスのみんなはあまりお花に興味がないみたいですが楠木さんとは話が合うので一緒にいて楽しいです
僕もつい釣られて笑顔になります



「あたしには無理だな……」



「どうしてですか?」



楠木さんは僕の目からみてもお花を愛する心はクラス、いや学年一だと思うのですが



「……あたしには足りないもの」



どちらかと言えば内気で大人しい楠木さんはどうやら言葉に迷っているみたいで
それが何となく伝わるから僕は急かすような事は言いません



ふと楠木さんの目線がゆれ動きました
その方向からは春野さんが三条くんに猛アピールする声が聞こえます



「百合がショウくんとペア組むー!!」



「僕とペア組みたい女の子みんな好きだよ」



途端に大きくなる騒ぎ声
その様子を見て顔を少しだけ曇らせた楠木さんに僕はすべてを悟りました



「好きなんですね」



「違うよっ!!」



突然大きな声で否定した楠木さん
言った瞬間我に還ったのか恥ずかしそうに俯いています
もっともクラスはこれ以上ないって位に騒がしかったので楠木さんの声は僕にしか届かなかったみたいですが



「すいません、考え足らずでした」



「……ううん、あたしもごめん」



どうやら僕が口にしてしまった事でつい恥ずかしくなったみたいです



「……あたしには勇気が足りないの」



僕はなんてバカなんでしょう
どうしてこんな事になってしまったのでしょう
込み上げてくる罪悪感と僕の本心を必死に押し殺し僕は楠木さんに告げました



「僕はそのままの楠木さんでいいと思いますよ」




お願いします、楠木さん
あなたはそのままでいてください
確かにあなたは大人しい方だとは思います
だけどお花を大事にして周囲を思いやっていて


純粋なところがあなたの素敵なところなのですから



少なくともあなたの恋が叶わないことを願うしかない僕よりもずっと




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