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□救済待ちの繊細ガール
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誰もいない体育館の裏の日陰
あたしは1人そこに腰を下ろす
遠くからはキャアキャア騒ぐ声が聞こえるけれど
あたしには何一つ関係の無いことだ
「……あっつ」
日陰とはいえども七月の真っ昼間
加えて風もないとくれば暑いのも当然だ
うちわ、持ってくればよかったな
このまま1人で何もなく過ごしたいなんて思ってる時点で実はそれを諦めていたのかもしれない
「黒鳥こんなとこでなにしてんの?」
あたしの前に現れたのは東海寺くんで
今最も会いたくない人では無かったことにホッとする
あたしの人生でこんなにも東海寺くんの出現に安心した事なんてないかもしれない
「みてわかんない?」
「……涼んでる?」
半分正解
だけどそれは言わば本来の目的についてきたオマケみたいなもので
「……隣いい?」
いつもなら拒絶の言葉を吐き出すのだけど今はそんな余裕なんてない
かわりに出て来たのはあたしにしては珍しい言葉
「東海寺くんは、いいよね」
瞬間驚いたように目を見開く東海寺くんが今だけは心底羨ましい
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