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□坂を越えて向こう側
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「黒鳥」



「なんですか?」



「今から登り坂だから落ちないようにね」



そう言って東海寺くんはたち漕ぎをし始めた


ぐんぐん上がるスピードに少し恐怖をおぼえるけど
東海寺くんが忠告したように落ちることは無いような、そんな緩やかな登り坂だった

ふと東海寺くんの方を見ると
やっぱりつらいみたいで
後ろからでも汗をかき始めているのが分かる
汗が光を反射してキラキラしていて何だかキレイだ





「見て、黒鳥」



いつの間にか登り坂は終わっていて
その言葉と共に自転車は止まった



「あそこだよ」



東海寺くんが指差した方に見えたのは
あたしたちが通っている学校で


坂の上から見ると見慣れた景色なはずなのに何だか違ったものに見えた




「……たまにはいいかもこんなのも」



呟き程度だったのに東海寺くんにはバッチリ聞こえてたみたいで



「黒鳥が望むならいつだっていいよ」




そういう事じゃないんだけどな

そう思いながらも何だか嬉しかった



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