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□眠れぬ夜は
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最近熱帯夜が続いていたが今日は一際寝苦しい


冷房器具の風がどうにも好きになれない俺はなにをするでもなくぼんやりとベッドに横たわっていた
かつてはこんな夜は学校に忍び込んで屋上で本を読んだものだけど今はそんな気にもなれない


背中にジワッと不快な汗をかき思わず体勢をかえると
窓の外に綺麗な月が浮かんでいた

月と言えばかつてのクラスメートである葉月を思い出す
いや、あいつは星座オタクだったかな
あんなに濃いクラスメートたちだったのにこんなにもうろ覚えなのかと苦笑いして
それは俺が興味すら持ってなかったからなんだろうなと思う





いや正確には
俺が興味を持ち続けているヤツもいるのだけど




視界に入る銀色に輝く月をみてふと思いついた
どうせ眠れないのならこの際やってみるのもいいかもしれない
それにどうせこの時間だし
起きていたとしても多分あいつは知らないだろう


それでいい
これは俺の自己満足だ






“月が綺麗ですね”




メールが送信されたことを確認してまたぼんやりと外を眺める

明治の文豪が用いた愛の言葉ははたして届くのだろうか



……届かないんだろうな、あいつバカだし
それにこんな事なんて興味無さそうだ




だから俺の携帯が彼女からのメールを受信したことを告げたとき俺は心底驚いた


まさか、返事がかえってくるなんて
でもまあきっとあいつは言葉通りに受け取ったのだろう







“私、死んでもいいわ”







本当に知っていたのかとか意味分かって言ってるのかとか色々と思うところはあるのだが
とりあえずこの寝苦しさはきっと朝まで続くのだろう




眠れぬ夜は愛を語ろう





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