short2

□本当にほしいものは
1ページ/3ページ

君限定騎士と一応繋がりあり



こんな関係を望んでるわけじゃないわ
早くこの曖昧さから抜け出したいのにあなたの気持ちが分からないから
あたしからは動けない




放課後学級委員の仕事を二人でしていて、
少しあたしが席を外しただけの短い時間だった
お手洗いから戻って教室に入ろうとした瞬間の出来事



「出雲くんが好きですっ」



可愛らしい声が聞こえて慌てて戸の陰にしゃがみ込んだ
これはもしかして、もしかしなくても告白というものじゃないかしら


落ち着きなさい、告白なんてされたこともあるじゃないの
と自分に言い聞かせてみるけれど


明らかにあたしの心臓は鼓動が速まっていて
同時に湧き上がった好奇心を満たそうとあたしはそっと教室の中を覗き見た




中にいたのは小柄で全体的にふわふわしたイメージの可愛らしい女の子
どちらかといえばキツいタイプだといわれることの多いあたしとはまるで正反対のタイプ



――見なきゃよかったわ、響也くんに告白している子の顔なんて
むしろ盗み聞きなんてはしたないわよ



頭の中でそういう言葉が巡るけれどもあたしは何故か動けなかった




「すいません、気持ちは嬉しいのですが」




聞こえてきた断るときの常套句にひとまずホッと胸をなで下ろした



「出雲くん、1つ聞いてもいい?」



「なんでしょうか」



「出雲くんと一路さんは、
どういう関係なの?」




その子が尋ねた質問に響也くんは困って見えた




「……どういう関係だと言われましても」



「付き合っているんですか」



よかったわね響也くん
今度の質問にはハッキリとした答えが用意できるわよ



「いいえ、そんなことはありませんよ」



あたしたちの関係は恋人同士なんて甘ったるいものじゃない
かといってただの友人と言い切るには距離感が近すぎるという自覚もある



「あんなに一路さんを甘やかしているのに?」



それは、違う
あたしは甘やかされているんじゃない、尽くされているの
普通の人にとってはその両者にある違いなんて僅かだけど
あたしにとっては大きな意味を持つのよ




「僕の行動はそう見えるのですか?」



そう言葉を発した響也くんにとってもこの二つには違いがあるみたいね



「僕は一路さんを甘やかしていません


僕は一路さんに甘えられてはいませんからね」




今のあたしたちの間にあるのは
響也くんの一方的な献身だけ
だからあたしは尽くされているの
だって甘やかされるにはあたしから甘えなきゃいけないじゃない
甘える甘やかすなんて関係じゃないのよあたしたちは



―――少なくとも、響也くんにとっては




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ