short2
□君との距離に息を呑む
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ふと水滴が手に当たった気がして空を見ると何だか不穏な雲行きで
もしかするともしかするかも……なんて思っていると
次第に水滴が当たる頻度が増してきて遂には激しく降り注ぎ始めた
「黒鳥っ走るぞ!!」
とっさにそういって近くの屋根のある場所に駆け込んだ
幸いほとんど濡れずにすみ黒鳥はと思って見て顔が引きつった
彼女はまだ雨の中にいた
走るぞと宣言したはいいが俺は彼女の手を引いて走るなんてまねが出来なかった
だから運動が苦手な彼女はまだ俺のいる場所にたどり着けなかったのである
「………ごめん」
びしょ濡れになった彼女にあやまると
「麻倉くん、足速すぎです」
と返された
確かにこの前体育で走ったときはえらく調子が良くて自己ベストのタイムを更新したな
と思っているとふとある一点に目がとまった
途端に顔が熱くなるのを感じる
幸か不幸か黒鳥は気付いてはないみたいだけど
白い制服が雨に濡れたことによって少し……いや、大分透けている
これは大変よろしくない
黒鳥にとっても俺の心臓にとっても
「………着とけよ」
自分が大して濡れていなかったのが幸いしたと思いつつ制服のシャツを黒鳥に手渡した
中にTシャツを着ていて本当に良かったと思う
「何でですか?」
「風邪引いたらダメだから、」
本当はそれだけではないのだけど
出来ればその理由は口に出したくない
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