short2

□脆く儚く
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今日から君は僕のものだよと
そう言って不敵な笑みを浮かべる大形くんに正直あまり驚きはしなかった

きっといつかはこうなるのだろうなと心のどこかで思っていた
それが予想していたよりも少しだけ早かっただけ





「君には僕がいるよ」



時と場合が違えばもっと違った効果が得られるのだろう言葉も今はあたしに恐怖感しか与えない
その言葉の続きを知ってしまったから



「だから他の奴なんていらないだろう?」



最初に聞いたときは何の冗談だろうと思った
だけどふいに大形くんは本気だと悟った
人間を豚に変えてそれを丸焼きにしようとしたくらいだもの
きっと大形くんにはいろんな意味で出来ない事なんてない



「あたしは大形くんだけだよ」



そう言わないと何をしでかすか分からない
そういう脆さを彼は纏っている

あたしの言葉を聞いて嬉しそうに笑う大形くんにそんなことはしてほしくなかった



「嬉しいよ黒鳥さん」



そう言って大形くんはあたしに触れる
その手つきはまるでガラス細工を取り扱うみたいで
大形くんの白くて細い指が小刻みに震えていた


いつだってそう
大形くんは何かを恐れるようにしてあたしに触れる



――君は僕を裏切ったりなんかしないよね



小さく呟かれた言葉に大形くんの本心が分かった気がする
何よりも大形くんは脆いんだ
裏切られるのが、見捨てられるのが怖いんだ
口ではなんとも無いように言ってたけど暗御留萌阿さんに見捨てられたことがきっとどこかでトラウマになってるんだと思う



「あたしは大形くんを裏切ったりしないよ」



しっかりと彼を見据えて言う
少しでも信じてもらえるように



「黒鳥さんに裏切られたら僕は本当にどうなるか分からないよ」



端正な顔立ちを歪めてあたしに迫る大形くんはきっとあたしに執着してるだけ
全てを知った上でそばにいてくれたからあたしを好きになったんだと思う


それでもいいよ
大形くんがそれで救われるなら





「愛してるよ黒鳥さん」




そう言って顔を近付けてくる大形くんを拒むことなんてできるわけがなかった



君の愛は脆く儚い





君は知らない
僕が本当に君を愛していることを
今こうしている瞬間でさえ満たされることなどないということを

いつになったら僕の気持ちで君を縛り付けることが出来るのだろうか








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