short2

□It's too sweet for me
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目の前に黒鳥が歩いているのが見えた
華奢な体をさらに小さく丸めて歩いている
今日は一段と寒さが強いから多分そのせいだろう


ふと思い立って慌ててランドセルの中を探る
今日は持ってきてたはずのそれはあっさりと見つかり
俺はその財布から小銭をとりだし自動販売機へと駆け出した





「黒鳥!」



そう声をかけると一瞬ビックリしたようにピクッと動いた彼女が振り向いた



「どうしたの麻倉くん」



「今日、寒いだろ?黒鳥」



「寒いですけど……、
あっリムジンなら乗りませんからね」



「今日はそうじゃない、これ、」



そう言って先ほど自販機で買った缶を黒鳥に手渡す
黒鳥がコーヒーを飲めるかどうか知らなかったから無難に選んだココアのホット缶をしばらく見つめていた黒鳥だけど、
我に返ったかのように焦りだした



「い、いらないよ!」



「ココア嫌いか?」



「嫌いじゃないけど、これは受け取れません!」



「なんで?」



「あたし、お金持ってないし
おごって貰うのも悪いし」



なんだ、そんなことかよ
一瞬俺からのココア缶が受け取れない深刻な理由でもあるのかと思って焦ったけど、黒鳥は俺に気を遣ってるらしい



「いいから飲めよ
……黒鳥に風邪ひかれたら困るし」



ホントは寒そうにしている黒鳥に何かしてやりたかっただけなんだけど、それじゃあ納得してくれそうにもないから多少の照れ隠しの意味も込めてそう言った



「ほら、冷えるから早く飲めよ」



「……ありがとうございます」



そう言ってチビチビココアを飲む黒鳥は可愛い
なんだかこう、思わず抱きしめたくなるというか
黒鳥のいない所ではよくヘタレだと(主に紫苑に)言われる俺がそれを実行に移せる気は残念ながら全くしないのだけど

そんなことを考えながらさり気なく黒鳥の隣を歩く
いつもなら拒絶の言葉をはく黒鳥は何も言わない
それは多分いろんな意味でココア缶のおかげだ



「甘いですね」



「………嫌いか?甘いの」



「ううん、そうじゃなくて」



そう言ったかと思うと俯いてしまった黒鳥
寒さのせいか耳が少し赤く染まっている
やっぱり自販のホットココアくらいじゃどうにもならないのか
リムジン呼べば良かったとかいろいろ考えが頭の中をぐるぐる回る



「………あたしは甘いの好きですよ」



彼女の言葉の真意は分からないけど何となく黒鳥は笑っている気がしたからまあ結果オーライだろう
それにしても、甘いのはココア缶よりも黒鳥だと思うのは惚れた弱みなのだろうか





その甘さを嫌いとは思えない


「麻倉くんってもしかして甘党ですか?」

「……まあ普通だと思う」


(甘党は黒鳥限定だ、)





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