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□小さな反撃
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「……甘いですね」



「……予想外だね」



そう言いながらクレープにかじりつく大形くん
近くを通りかかる女の子達がちらちらと大形くんの方を見ていてやっぱり大形くんはモテるんだよなと改めて実感した



「やっぱり最初のにしとけば良かったですね……」



「でも割引は捨てがたいよね」



お店で注文するときに、“こちらのクレープをカップルで注文されると三割引きですよ”って店員さんに言われたから急遽注文を変えたのだけど
そのクレープの予想外の甘ったるさに結構飽きてきました



「ていうかあたしと大形くんでもカップル割引使えるんですね」



「何言ってるんだい
恋人同士だから当たり前だろ?」



「そういうことじゃなくて、
ちゃんとカップルに見えるんですねあたしたち」



実を言うとちょっとだけ不安だった
大形くんがあんまりにもキラキラしてるからあたしなんかが隣にいてもいいのかななんて
お世辞にも美人だとは言えないあたしが隣を歩いててもいいのかななんて
だからどうこうなんて気持ちは全くないのだけど気になるものは気になる



だからさっきは嬉しかったんだ




「……黒鳥さん、可愛い」



「は、はい?」



今の流れでなんでそうなったんですか?



「大丈夫心配しないで
僕は黒鳥さん以外に興味ないし、黒鳥さんはそのままで十分可愛いよ」



歯の浮くようなセリフをさらっと言ってのける大形くんは本当にすごい人だ
その言葉だけであたしを安心させてくれるんだから


あたしはクレープにかじりつく
飽きたと思っていた甘ったるい味が何だか新鮮に感じる
これならなんとか完食できそうだ



「食べ終わったらどうする?」



早くもクレープを食べ終えた大形くんが微笑みかける
何だか余裕ありげでちょっとだけ悔しい



「他にどこかよって帰るかい?」



「ううん、それよりも」



あたしばっかりドキドキさせられるのは悔しいからこれはあたしの精一杯の仕返し
大形くんにとっては大した事ないかもしれないけど



「手を繋いで帰りましょうか」




たまにはちょっと位歩み寄ってみましょう


(……黒鳥さん、僕を殺す気?)





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