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□愛情テディベア
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夕暮れの2人きりの帰り道
なんだかソワソワしている黒鳥さん
僕の話(ぬいぐるみとの会話)を聞く素振りは見せてるのだけど実は何一つ内容が入ってない気がする
まさに心ここに非ずって感じだ



「……黒鳥さん、聞いてるかねぇ?」


「うわっ!!…じゃなくて、聞いてるよっ!!」



黒鳥さんの様子をみる限り確実に聞いてなかったんだろう
別に僕にとっても世間話程度だし、端から見たら僕がぬいぐるみに話しかけてるだけだから
もし聞いてなくても黒鳥さんが悪いわけじゃないけど



「別にいいんだけどねぇ」


「リスさんがいるからねぇ」



そう言いながら手にあるリスのぬいぐるみを眺める
暗御留燃阿につけられたぬいぐるみに嫌な感情が全くないとは言えないけど
ここまで来ると愛着が沸いてくる




それにしても黒鳥さんは何かをずっと考えているように見える
僕はその何かが少しだけ羨ましかったりもする
上の空になる程黒鳥さんに思ってもらえるなんて素晴らしい事じゃないかな



「ギュービッドに何かあったのかねぇ?」


まあ大体黒鳥さんが思い悩む事なんて数が限られてるし
きっとギュービッド関係だろうなと予想を立てて彼女に尋ねてみた



「ギュービッド様?何にもないですよ」



思い描いていたのとは異なる反応が返ってきてちょっと拍子抜けしてしまう
てっきり“ち、ちがいますよ!!”なんて言って真っ赤になりながら首を振って否定すると思ったんだけど
この様子だと本当にギュービッド関係じゃないみたいだ


となると、桃花ブロッサムの事だろうか
でも僕は一応彼女とは一緒に暮らしてるわけで
血の繋がりなんて全くないけどそれでも僕と桃花は兄妹という関係なのだ
もし桃花ブロッサムに何かあったなら黒鳥さんよりはやく異変には気付くだろうから多分これも違う


そうなるといったい何なのだろうか
黒鳥さんを悩ませているものは




「……まさかとはおもうけどねぇ」



自分でも考えていて馬鹿らしくなる


ひょっとすると、多分ちがうと思うけど、万が一黒鳥さんが麻倉や東海寺の事について悩んでいるとしたらなんて考えて
それは僕の単なる想像なのにものすごくモヤモヤした気分になってしまった



自分自身僕は割と独占欲は強いと思うけど自分でもここまでだとは思わなかった



「へんな大形くんですね?」



「……黒鳥さんには言われたくないんだねぇ」





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