short2

□愛情テディベア
2ページ/3ページ





そんな話をしているうちに見慣れた家たちが近付いてきた
半ば反則技のように引っ越してきた家だけど僕は今の家が好きだ
前の家より賑やかになったし、なにより黒鳥さんの近くにいるんだと実感できるから



「大形くんちょっと待っててくださいね」



そう言って黒鳥さんは駆け足で(もしかしたら全力なのかもしれないけど)自分の家へと向かった
一人残された僕は何をするでもなく周りの風景を見渡して先ほどまでの黒鳥さんの言動について考えていた



「大形くん、これっ!」



家から再び出てきた黒鳥さんが僕に差し出したのは淡いピンク色の袋
その意味を即座に理解した僕は何だか暖かな気持ちを感じる



「覚えててくれたのかねぇ」

「うれしいねぇ」



「当たり前じゃないですか
ちゃんと覚えてましたよ」



ふわりと微笑む黒鳥さんはどうやら前々から準備してくれてたようで
もしかするとさっきまでの挙動不審もこのためかと思うと
変に考え込んでた自分が恥ずかしくなる



「あ、中身は帰ってからみてくださいね」



帰ってもなにも家の前にいるんだからいつ見ても一緒だとは思うけど
黒鳥さんがそう言うなら後のお楽しみにしよう



「大形くん、お誕生日おめでとうございます」



「ありがとうだねぇ」

「黒鳥さんに祝ってもらえて嬉しいんだねぇ」








家に帰って部屋に入って逸る気持ちを抑えつつ袋を丁寧に開ける
黒鳥さんにもらったものは何でも大切にしたいから
我ながらベタぼれだとは思いつつ中身をみると



「あ、お兄ちゃんそれいいですね!」



いつの間にか部屋に入ってきていた桃花ブロッサムが僕の手にあるものをみて言う



「お兄ちゃんそれ誰に貰ったんですか?」



「誰にってどういうことなんだねぇ?」



手の中の小振りなテディベアはいたってシンプルな物で、強いていえば首にリボンが結ばれている位しか特徴がなくてそれほど珍しいものだとは思えない
もちろん黒鳥さんがわざわざ僕のために選んできてくれたものに文句があるわけはないのだけど



「お兄ちゃん知らないんですか?」



「何をだねぇ?」



「そのテディベア、今女の子の間で大人気なんです
そのテディベアは実はセットで売られてて
片方を自分で片方を好きな人にあげると両思いになれるって噂なんですよ」



そう言ってまじまじとテディベアを見つめる桃花ブロッサム
彼女の言葉を信じるならばつまりは………



「で、だれに貰ったんですか?」



早とちりは良くないとは思うけれど期待せずにはいられない
わざわざ僕のために買ってくれたのだからまさか知らないわけでもないだろうし


どちらにせよ



「……それは秘密なんだねぇ」



黒鳥さんは僕に何よりも素敵なプレゼントをくれたのは確かだ



テディベアに愛を込めて





あとがき→
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ