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□産み出しては押し殺す汚い感情
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ドロドロと生まれては押し殺すこの感情はどこへ向かっていくのだろう?
一旦生まれてなかなか消えないそれは狭い狭い器から溢れ出て
いつか君を苦しめやしないだろうか




今日も今日とて黒鳥さんはいつもの二人に絡まれている
僕からみてもウンザリした様子がはっきり見て取れるのにあの二人はどうしてあんなにもめげずに頑張るのだろうか
東海寺も麻倉もはやく気付いてやめればいいのに
そうしたら晴れて僕だけの黒鳥さんだ



そこまで考えてはっとした
いけないいけない
またあの闇に飲み込まれるところだった
一度足を踏み入れたが最後抜け出せないのが分かってはいても僕は何度もそちらに向かう


だいたい僕だけのとか言いながらも僕は彼女に思いは伝えていない
醜い感情とちっぽけな独占欲だけは一人前だけど、あとは何もかも足りない僕は自分に自信がないのだと思う
だから彼女に思いを伝えるのを躊躇うし、いつだって曖昧な態度しかとれない



「……大形くん、怖い顔してる」



須々木さんにそう言われるほど僕の心は醜いのだろうか
でも仕方ないだろう
好きな子が他の男に絡まれてて嬉しいわけがない



「麻倉!俺の黒鳥に触るんじゃない!」



「なんだと!だいたいお前が先に触ってるんじゃないかこのエロ祈祷師め!!」



あれほどストレートに表現できたらどれだけいいか
もっともぬいぐるみのない“僕”なら簡単に言えそうな気もするけれど
それは許されないと分かっているから僕はため息をつかざるを得ない



「……あたしには何も分からないけど、ため込むのは良くないよ」



こちらの顔色を伺いながらそう言う須々木さん
いつもの不幸オーラはどこへやら真剣に僕を心配してくれているのだと分かるから余計に僕は何も言えない



分かってるさそんなことくらい
このままじゃいつか僕の気持ちは暴走して黒鳥さんを傷つけるだろう
その日が来る前にいつかは言わなくちゃいけない
きっとこの醜い感情を含めた黒鳥さんに向けての思いは膨らむことはあっても消えることなどないのだから



「そろそろ潮時かねぇ?」


「覚悟を決めた方がいいのかねぇ?」



聞こえないように小さく呟いたつもりがどうやら須々木さんには丸聞こえだったようで
“頑張って”と不幸な隣人は微笑んだ



せめて少しは浄化できればいい



(いつかは綺麗な気持ちで愛せるのかな)




title*堕天使

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