short2

□伝える方法
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毎日のように言ってくるから気になっただけ
ただそれだけなの




「黒鳥!今日も可愛いなぁ」



あたしを好きだと言っていつも迫ってくる彼の言葉
たいてい陰陽道とか黒い霊力だとか怪しい言葉も多いんだけど、それと同じくらい多い言葉



「……東海寺くんホントにあたしを可愛いって思ってるの?」



自覚はしているし周りには昔から美人さんが多かったから間違いない
あたしの顔のレベルはせいぜい中の中
東海寺くんが言ってくれるほど可愛いって訳じゃないんだよね
もちろんあたしだって一応女の子だし、可愛いって言ってくれるのはうれしいんだけど
言われるたびになんだか罪悪感を感じちゃう



「何言ってるの?黒鳥が世界一可愛いよ」



「だからそれ本気なんですか?」



「もちろん!!」



ニコニコとあたしを見つめる東海寺くんをみて、ああこの人本気だと考えざるを得ない



「要は伝え方の問題だよ」



「はい?」



「世界一の美女は黒鳥じゃなくても俺にとっての世界一可愛い子は黒鳥ってこと」



余計分からない
とうとう東海寺くんも頭がおかしくなったのかな



「可愛いって“愛することが出来る”っていうことだよね」



まああくまで俺の解釈だけどと微笑む東海寺くんは、そういえば国語が得意だったなと思う



「俺が可愛いって言うときは、黒鳥を好きだなって思った時なんだよ」



つまり美人は世間一般論で可愛い子は好きな子ってこと?
ということは可愛いと言われるたびに東海寺くんはあたしを“好きだ”と思ってるわけなんだよね……?



「……よくそんなこっぱずかしいこと言えますね」



「迷惑?」



そう問われて改めて考えてみる
確かに東海寺くんの行動が鬱陶しいと思ったことはあるけど、それが迷惑かといわれたらなんだか違う気がする
今まで言われてきた可愛い一つ一つが東海寺くんの真剣な気持ちなんだと思うと尚更に



「そんな聞き方はズルいですよ」



「いいじゃん、要は伝え方なんだからさ」



余裕ありげな東海寺くんにちょっとイラっと来たけど
それ以上にその表情を崩してみたくなる





「東海寺くんも“可愛い”ですよ」




一言そう告げると一気に崩れた余裕の表情
上手く言って良かったと思いながらもあたしもなかなかこっぱずかしいことを言ってるななんて



「それはどういう意味で取ればいいの?」



「そんなの秘密ですよ」



「……黒鳥も充分ズルいって」



真っ赤になってしまった東海寺くんをまた“可愛い”って思ったのは言わないであげた





要は伝わればいいのです



(やっぱり気になるから教えてよ!!)

(……ちょっと待って心の準備が、)






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