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□信じてみたい君のこと
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「……嘘ですよね」
「ごめんそれこっちのセリフ」
ハァとため息をつきながらダルそうに速水くんは座り込んだ
「現実から逃げるのもまあ悪くないけどさ、気付いたんなら言えば?」
「……イヤです」
「何でだよどう考えても両思いじゃん」
「そんなの分かんないよ
あたしより可愛い子いっぱいいるし」
さっき東海寺くんを訪ねて来てた女の子を思い出す
いかにも今時の女子らしい可愛い女の子だった
こんな可愛げの欠片もないオタク少女よりも絶対東海寺くんにはお似合いだ
「……例えば東海寺と俺なら黒鳥はどっちがかっこいいと思う?」
「そりゃ速水くんでしょ」
「でも別に俺の事好きじゃないだろ」
確かに速水くんはかっこいいと思うしあたしの数少ないお友達だとは思うけど
そういう意味で好きだと思ったことは一度もない
「だったら東海寺だって一緒だろ」
そうだといいけどね、なんて返したらまたため息をつかれるのが分かっているから胸の中にそっとしまい込む
ほら早くいけよとあたしを送り出す速水くんは何だか複雑げで
“なんか娘を嫁に出す気分だ”と小さく呟いていたのはあたしの気のせいだと思いたい
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