short2

□ただただそれだけ
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多分今が人生で一番混乱してる時なんじゃないかと思う
下手すれば俺の人生を根本から変えてしまうようなそれほどの事を目撃してしまったのだから
気のせいだとは思いたい
だけどあれは明らかに、



今日の夕方落合川で黒鳥を見かけた
彼女が学校に今日も着てきていたオーバーオール姿ではなく時たま見かける黒いゴスロリに着替えていたのを不思議に思って
俺はいつものように声をかけるのを少し躊躇った



次の瞬間俺は自分の目を疑った



黒鳥が何か棒状のものに跨がったかと思うと
フワフワと彼女の身体は地面から離れて空中に浮かんだのだ
ほんの一瞬だけだとかではなくかなりの長い間彼女はそうやって空中に佇んでいて
俺は自分の見ている光景が夢でもなんでもなく確かな現実だと認識せざるを得なかった




その後どうにかして混乱する頭で帰宅して今に至るのだが、



「何なんだ、いったい」



声に出してみたところで事態が解決するわけでも無かったけれど
幾分冷静さに欠ける今の自分を落ち着かせるのにはちょうどいいのかもしれない



信じられないとは言い切れなかった
彼女はいわゆるオカルトオタクでそういう術をどうにかして身につけたのかもしれない
納得はできなくても、有り得なくはない
俺が引っかかっているのは実はそこではなくて



――嫌われてるのかな、俺は



散々東海寺が霊能力の話をするたびに嘘だと罵った俺は彼女の目にはどう映っていたのだろうか
俺があれほどまで東海寺に突っかかってたのはどうにかして黒鳥の視界に入りたかったからで、要は会話の内容なんてどうだって良かった
だけどそれが黒鳥にとって、とても大切な事だったとしたらそれは俺を嫌う十分な理由になる



とにかく明日どうしようか
学校で会っていつものように声をかけて、そんな単純なことが出来そうにもない
俺は黒鳥を好きになって初めて学校に行きたくないと心底思った




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