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□例えばあなたにとって私は通行人Bでいい
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キラキラ輝くお星様
彼はまさにそんな存在だ
そんな彼を見つめては、言えない気持ちを増やしていく
「楠木さん」
これ落としたよとあたしのシャープペンシルを差し出し全ての女の子を魅了するような笑顔で微笑んでいるショウくん
その笑顔を向けられて嬉しいはずなのにあたしは素直に喜べない
「……ありがとう」
鋭い視線があたしに突き刺さるのを感じながら一言お礼を言う
そして素早く彼の目の前から去るのが正しい選択なのだと思う
だけどショウくんは残酷だった
「どういたしまして」
今まで以上に眩しくキラキラした笑顔のせいで頭の回転が鈍って正しい行動がとれなかった
気付いたときにはもう手遅れだった
周りの女の子から向けられる目線がさっきまで以上に冷たい
あたしは知っている
今までこんな視線を向けられた女の子がどうなってしまうのか
鏡がないから分からないけど多分あたしの顔は真っ青
どうしようと思う間もなくあたしはショウくんの前から走り去った
『ごめん麗華ちゃん
つぎはあたしみたい』
せめて病弱な友人に迷惑はかけないように急いでメールを作成する
きっと麗華ちゃんは何も知らないままあたしを庇ってくれると思うから
あたしの不注意でのことに麗華ちゃんを巻き込みたくなかった
いつもなら周りの席の女の子とお話ししてすごす休み時間
ポツンと一人ぼっちになったのは予想の範囲内だった
それにしても情報の伝達が速いななんて思ってみたりもする
――最初はいつだったか
ある女の子がハブられ始めたと噂で聞いた
悲しいことだけどそれ自体はよくあることだと初めは気にも留めていなかった
だけど色んな話を聞くにつれてはっきり“異常だ”と思った
彼女はただショウくんとお話ししていただけだった
その女の子に彼氏がいることはみんな知ってたし、実際ショウくんはカッコいいけどタイプじゃないと公言していた
その主犯がかつてのクラスメイトだと知って本当に怖かった
嫉妬は人をこんなにも変えてしまい歪めてしまう
出来るだけ関わらないでおこうとあたしはかたく誓ったのだ
「楠木さんちょっといーい?」
ああこれが俗に言う呼び出しかと何故か納得しているあたしがいて
あたしの名前を呼んだ子は“こころちゃん”と呼んでくれていたのにと悲しくなる
「あんまり調子に乗らないでよね」
校舎裏につくなり吐き捨てられたその言葉はあたしの心をえぐる
彼女たちの嫉妬のラインは回を重ねるほどに手厳しくなっていて
今日なんて微笑みかけられただけなのに
それはそんなにもイケないことなの?
「あなたなんてショウくんの視界に入ってないのよ」
だったらいいじゃない、それで
あたしはショウくんは好きだけどリスクを侵してまで近付きたいとかそういう感情じゃないの
遠くから眺めているだけで幸せなんだから
強く押された肩が痛む
あたしの心も、痛い
分かってるの、分かってるから
どうかあたしをそっとしておいて
通行人以上にはなりたくない
title*青春
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