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□LOST
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「後悔しない様に、そう生きたって悔いは残る」



嗚呼確かに、悔いは残っちまったな。















─────────LOST─────────
















「後ろだ馬鹿者!!」


バシンッ、と強い衝撃が後頭部を襲う。
平手打ちなのにこの威力。
中々慣れるものじゃない。


「〜…ったぁ..」


あまりの痛さに俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。


「全く..これで52回目だな、戦場だったら52回死んでた所だ。」


上から俺を睨み付ける鬼教官。
残念ながら投げ掛けられた言葉に返す言葉は見付からない。


「...スンマセン」


自身の頭を労るように撫でながらぽつり。
へこんでいるとさっきまで俺を見下ろしていた目線が横に移動している事に気付く。


「..コロネロ」


「え..もしかしてキス..」


「死ね」


冗談のつもりが相手からは本気のフックパンチ。
パンチがクリーンヒットした顔面を必死に労っていると、もう一度名前を呼ばれた。


「何だ? コラ」


相手に顔を見やると、鬼教官の顔はいつも以上に真面目な面持ちをしていた。


「..ラル..?」


「..軍人が戦地に赴く時に、してはならない事がある。」


真っ直ぐ俺の目を見て諭すように語る。
目を逸らすことが出来ない。
俺は口をつぐんだ。


「それは、生に対する執着と後悔だ」


「執着と後悔..」


相手の言葉を繰り返す。
自分が理解できる様に。


「そうだ。 軍人とは国を護る為に命を賭して戦う者達の事。 生にしがみ付いていたら何時までも軍人にはなれん。」


「後悔もしたら駄目なのは何故だ..?」


その問いに、ラルは心なしか哀しげに笑っている様に見えた。


「..後悔は悲感しか生まないからだ。 後悔は決心を鈍らせる」


しかし、だが..と続けられた言葉は意外なものだった。


「お前達は後悔する事を忘れるな。」


「え..だけどさっき..」


困った様に笑う教官を見てまた言葉が途切れる。


「確かに、俺は今まで後悔するなと教えてきた。 俺がそう教えられた様に。 だがそう教えた生徒が俺の所に帰ってくる頃には誰1人口を聞ける者は居なかった。 生き残った奴なんか、居なかったんだ。」


拳をギュ、と強く握っている。
まるで何かに耐える様に。
俺は黙って話を聞いていた。


「..だから、お前達は後悔しろ。 郷を思い出せ。 愛している者を思い出せ。 自分を待っている者を思い出せ。 ..戦場で誰とも知らず死んで、待っている者達を何時までも待たせる気か?」


教官の顔は優しくも深い哀しみで満ち溢れてる。
一体、何程の生徒や友人を無くしたのだろう。
これは強い者に課された運命だとでも言うのだろうか。


「..後悔しない様に、そう生きたって悔いは残る。 2日後には大規模な闘争にお前達は駆り出される。 這いつくばってでも生き残れ。」


そう言って俺の頭を乱雑に撫でると教官は管理棟に消えていった。





その2日後、俺達は戦禍の中に飛び込んだ。





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闘争はコムスビン勢の勝利に終わったが、



戦死者約4万5200名
負傷者約束12万名





生存者の中に生徒は居らず、教官の所に届いたのはいつもの口を聞くことの無い教え子達と、迷彩柄のバンダナだった。







fin.&アトガキ→→→

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