第1部
□第9の枝 猫耳娘のハッピーハロウィン(後篇)
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そして、本日もアナベルからの減点はないまま、魔法薬学の時間は終了した。
ただし、もれなく全員たっぷりの課題を与えられ、いまいち冴えないハロウィン気分の中、
生徒たちは、一斉に地下の教室を飛び出していく。
ジニーも、双子を捕まえて文句を言ってやると、走って行ってしまった。
アナベルはそれを見送り、子猫を抱えてのんびりと教室を出た。
早いところ地下からあがって、痛いほど突き刺さってくる視線から逃れようと足を速めたのだが。
「にゃ!」
「へ?」
ぱっと何かに反応して顔を上げた子猫のナイルが、アナベルが驚いている間に、腕の中から飛び出して走って行ってしまったのだ。
「ちょ、ナイル!どこ行くの?」
慌てて声をかけるものの、子猫は一目散に走って行ってしまう。
こんな猫耳尻尾付きの姿で、地下を歩き回りたくはなかったが、
アナベルは愛猫を地下に置いて行くわけにもいかず、急いでその小さな体を追う。
「ナイルー!」
待ちなさい!
そう言いながら追いかければ、少し進んだところで子猫はちょこんと床に座り込んでいた。
「?何してるの、そんなところで。」
いきなり走りだしたかと思ったら、そんなところに座りこんで。
呆れるように言えば、ナイルはにゃーと鳴く。
どこか得意げなその鳴き声に、アナベルが首をかしげているのも束の間、
突然子猫が座りこんでいる前の壁が開いて、緑のネクタイをした生徒が出てきた。
「ぅわ!?」
アナベルも仰天したが、出てきたとたんグリフィンドール生と鉢合わせたスリザリン生も驚いたらしい。
目を丸くしてアナベルを見つめているその少年は、見事なプラチナブロンドだった。
「せ、先輩!?」
「アナベル!?」
なんでこんなところにいるんだ?という言葉は、口から出る前に喉の奥で消えてしまった。
驚いている少女のミルクティー色の柔らかな髪から、ぴょこんと猫の耳が飛び出しているのを見てしまったからだ。
そろりと視線を下に向ければ、ローブの下から先の方だけ出ているすらりとした茶色の尻尾。
「………………。」
何も口からは出てこなかったが、ドラコは心の中でうわあぁぁ!と叫んでいたりする。