第3部

□第9の枝 ハロウィン前日の攻防戦
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 「であるからして、頭痛薬を作る際、最後にすべてを煮詰めれば、薄い空色になるはず。
教科書にも載っている上、板書にも書いたつもりだ。」



そこで黒づくめの魔法薬学教授は、叱責の効果を高めるべく言葉を切り、
じっ…と目の前にある大なべを見下ろした。



 「…つまり、Mr.ロングボトム。
本日作るべき頭痛薬は、君の大なべの中身のような濁ったドブ色をしているわけがいない、ということだ。おわかりかね?」



ネビルの大なべの中身は、一体何をどうやったのか、恐ろしく濁ったヘドロのような色をしていた。
そのくせ、立ち上る匂いはミントのような清々しい匂いなのだから、余計に得体の知れないものとなっている。


ネビルは縮こまり、合同授業で一緒のスリザリン生からは一斉に忍び笑いが巻き起こる。



 「グリフィンドール5点減点。いますぐやり直したまえ、ロングボトム。
それから、別に課題として、頭痛薬に関するレポートを羊皮紙3巻き提出するように。」



苛立たしそうにそう言い捨てて、スネイプはつかつかと足音高くその場を離れた。

周りの生徒は慌ててネビルの二の舞にならないように、少しでもマシなものを作ろうと大なべをかき回し始める。


ちなみに、今日この4年生のグリフィンドール生とスリザリン生が作っている『頭痛薬』というのは、
マグルの知っている『頭痛を治すための薬』…という意味での頭痛薬ではない。

その逆の、ひどい頭痛を引き起こす魔法薬で、むしろ呪いに近いようなものだった。




 「あーあ。これ、僕も課題追加かも。」



ネビルから少し離れたところで大なべをかき回していたロンが、うんざりとため息をつく。

ロンの大なべはネビルほど酷くはないものの、確実に空色とは言えないオレンジ色に染まっていた。


隣で調合していたハリーも似たようなもので、
唯一反対隣りのハーマイオニーだけが、着実に大なべの中身をきれいな空色に近づけている。
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