第3部
□第10の枝 恋人たちのハッピーハロウィン(前篇)
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「ジニー、朝よ!起きて。」
「うー……ん。」
「ほら、みんなも起きて。遅刻しちゃうわよ。」
朝7時。
グリフィンドールの女子寮で、
ハシバミ色の目を持つ少女アナベル・ポッターは、自分の長い髪を梳かしながら、同室の友人たちに声をかけた。
1年の頃から、この3人のルームメイトを起こすのは、
いつの間にやら、一番早起きのアナベルの仕事になっていたのだ。
ジニーもそうだが、他の2人のルームメイトたちもめっぽう朝には弱いらしく、なかなか目覚ましだけでは起きない。
アナベルが声をかけても、一度で起きることは稀だった。
「ほーら!起きなさいったら。朝食食べ損ねても知らないわよ?」
そのまま髪を梳かし続けていると、いつの間にか、
起きようと唸る声が寝息に変わってしまったことに気付いて、アナベルは再度声を張り上げる。
そして、ついでに杖を振り上げて、全員の体から布団を引っ剥がしてやった。
「うわぁ、ちょ、アナベル、寒い…。」
空調の呪文が聞いているとはいえ、朝は特に冷え込む。
ルームメイトの一人が寝ぼけ声で、哀れっぽく言ったが、
アナベルは無情にも、布団をぽいと離れたところに移動させてしまった。
「ダメよ、あったかいと寝ちゃうじゃない。ほら、ジニーも起きなさい!」
隣のベッドで、かたくなに丸くなっている赤毛の友人に声をかければ、
ジニーは、ようやく諦めてもそもそと動き出した。
「うー、寒い!ていうか、眠い!」
「諦め悪いわねえ…。そんなこと言ってると、本当に朝食に間に合わないわよ。
今日はハロウィンだから、かぼちゃ尽くしだろうけど。」
すーっ、すーっと丁寧に髪に櫛を入れながら、アナベルが笑う。
それを聞いたルームメイトが、あーあとため息をついた。
「そういえば、今日ハロウィンか。
やだなぁ、あたし、あんまりかぼちゃ料理って好きじゃないのよねぇ。」
そうぼやきながら、もそもそと着替え始める。
ジニーもそれに倣いながら、頭の中でぼんやりと今日の予定を思い出そうとした。
えーと、確か初っ端が魔法史で睡眠時間、次が恐怖の魔法薬学で、それから…。