第3部
□第11の枝 恋人たちのハッピーハロウィン(後篇)
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「うー…お腹いっぱい…。」
「でしょうね。」
明らかに食べすぎたと唸っている赤毛の友人とともに寮に向かって歩きながら、アナベルは苦笑した。
ダームストラングとボーバトンの生徒たちの歓迎会も兼ねたハロウィンパーティーは、
なかなか豪勢で、派手なものだった。
ご馳走も、かぼちゃばかりではなく様々なものが出たので、ジニーも張り切って食べ過ぎてしまったらしい。
「でも、結構楽しかったわね。特に、到着の時が。」
歩きながら、ダームストラング、ボーバトンそれぞれが登場した時のことを思い出して、アナベルはそうコメントした。
ジニーも、あーと頷く。
「すごかったわよねえ。特に、ダームストラング。まさか、船で来るなんてびっくりしちゃった。
ビクトール・クラム、見た?ハリー先輩たちってば、わいわい言ってたわね。」
「みたいね。でも、人が多すぎてわからなかったわ。」
けろりとそう答えるアナベルに、今度はジニーが苦笑する。
少しでもクイディッチファンの人間なら、ビクトール・クラムの顔くらいよく知っているはずなので、
あの人混みでも、容易に見分けられただろう。
ただ、この秀才の友人は人とは少し違うらしい。
「でも、ボーバトンの馬車の方が素敵じゃない?あのおっきな天馬!
ドラコ先輩のところの子より、大きな種類だったわ。きっと、大型の馬車を引く用の天馬なんだろうなぁ。」
アナベルは、そのハシバミ色の瞳をキラキラさせながら言った。
無類の動物好きであるこの友人なら、
たぶん天馬に夢中になるだろうなぁとは思っていたので、ジニーはふーんと頷いて見せた。
「天馬にもいろいろ種類があるのね。…ていうか、マルフォイは自分の家に天馬なんて飼ってるの?」
思わず、聞き咎めてしまった。
しかし、アナベルはいともあっさりと頷く。
「アネモスとアステールっていうの。とってもお利口さんで綺麗な天馬よ。」
「……へえ。」
まあ、いいや。
つっこむまいと決めたジニーは、食べ過ぎて重い体を運び、ようやく寮に到着した。