第3部
□第14の枝 怪我の功名
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― かつん、かつん、かつん…。
早朝。
秋というより、もう冬が垣間見えてきた時期だけに、まだ薄暗いホグワーツ。
その中を、硬質な革靴の音を立てて、ゆっくりと歩いている人影があった。
深緑と銀のネクタイをきちんと締め、折り目正しく制服を着こなした身なりのいい少年。
その制服の胸元には、監督生のバッジが控えめに光っている。
そう、彼は監督生だった。
そして、今の時間こうしてホグワーツの中、見回りをしている監督生は彼だけではないはずだ。
トライウィザードトーナメントという我らが校長が開催している厄介な行事のせいで、
今のホグワーツにはダームストラング、ボーバトンという他校生までいる。
そのため、何があるというわけではないが、
監督生たちは当番制で、就寝時間後のみならず、早朝も見回りをすることになったのだ。
― かつん、かつん。
その少年も、鋭い目を光らせながら、のんびりとひっそりと静まりかえる朝の城内を歩いていく。
早起きは嫌いではなく、こうした喧騒のない空気を歩き回るのは気持ちがいい。
騒音の嫌いな彼は、早朝の冷たい空気を頬に感じながら、決められた範囲を見回った。
そうやって、本日も何事もなく見回りは終わるだろう。
そう思った、ちょうど時。
静寂を破る耳障りな騒ぎが、彼の耳に入ったのだった。