第3部
□第17の枝 寮を越える少女(後篇)
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グリフィンドール寮にて、ジニーが賢明な判断をして、その場に留まっている頃。
談話室を走り出たアナベルは、とりあえず闇雲に走っていた。
そして、うろたえて、何かから逃げだすように走っていたアナベルは、当然のように人とぶつかってしまった。
「うわっ!」
「あ!」
相手はかなり先輩らしい少年で、ぶつかったアナベルの方が倒れてしまったが、
上級生の方も、持っていた教科書を落としてしまった。
「おい、危ないじゃないか!」
憮然とした顔でそう言った上級生のネクタイは、深緑と銀。
間の悪いことに、スリザリン生だったのだが、
アナベルは普段からあまりネクタイの色を気にする習慣はなかったので、ただぶつかってしまったことに慌てていた。
「ご、ごめんなさい!すみません、前を見てなくて…。」
慌てて教科書を拾おうとしたのだが、その前に上級生が自分でさっさと拾っていた。
その時初めてネクタイに気付いたアナベルは、はっとする。
(いけない、スリザリンの人だ。)
スリザリンに純血主義者が多いのは事実。
潔癖な純血主義の生徒なら、グリフィンドールの自分に持ち物を触られたくないかもしれない、
という可能性に思い当って、アナベルはますます、申し訳ない気持ちになった。
「本当にすみません。私…。」
「はぁ…もういいって。ていうか、さっさと立てよ。」
本当に申し訳なさそうに慌てているアナベルが、意外でもあり些か気の毒でもあり、
そのスリザリンの上級生はため息をつきながらも、ぶっきらぼうにそう言って手を差し出した。
…のだが。