第3部

□第18の枝 昼下がりの目撃者
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不自然なほどがらん…と静まり返り、賑やかなはずの生徒の気配もないホグワーツの城内。


なぜそんなに静かなのかと言われれば、
ただ今の時間は、三大対抗試合の第二の課題の真っ最中だからだ。

水中で行われるというその課題を見に、生徒たちはほとんど全員城の外へ出ていたのである。


しかし、今、誰もいないはずのそんな中に、小さな鼻歌が響いていた。




  探しにおいで 声を頼りに

  地上じゃ歌は 歌えない

  探しながらも 考えよう

  われらが捕らえし 大切なもの

  探す時間は 一時間

  取り返すべし 大切なもの

  一時間のその後は もはや望みはありえない

  遅すぎたなら そのものは もはや二度とは戻らない





甲高くもなく、柔らかに、まるで子守唄のように優しく聞こえるその歌声に、
一番近くでその歌を聞いていた猫が、ふわぁ…と可愛らしい欠伸をした。



 「あらあら、おねむなの?」



笑いを含んだ声。

歌を歌っていたのと同じその声の主は、長いまつげに縁取られた柔らかなハシバミ色の瞳をしていた。


彼女、アナベル・ポッターは、治療をしていた三毛猫をそっと膝から床に下ろした。



 「はい、おしまい。でも、ちょっと待ってね。」



アナベルが微笑んでそう頼めば、三毛猫は大人しくみゃーおと鳴いてその場に座る。

アナベルは手早くローブの内ポケットから、羊皮紙の切れはしと携帯用の羽ペンを取り出した。



『この猫が怪我をしていましたので、勝手ながら治療させていただいてます。
切り傷に包帯を巻いているので、2,3日したら取ってあげて下さい。 

グリフィンドール2年生アナベル・ポッター』




そんな短い手紙を書き、アナベルはくるくるとそれをたたんで、三毛猫の首輪に挟みこんだ。
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