第3部
□第20の枝 あわや大惨事(前篇)
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「アナベルー、一緒にオセロしない?」
「オセロ?」
子猫を抱え、談話室を出ようとしていたアナベルは、
ジニーにそう声を掛けられて、首をかしげながら振り返った。
赤毛の友人は、手に小型のゲーム板を抱えている。
「オセロってなぁに?」
「マグルのゲームなんだって。ハーマイオニー先輩にもらったの。見た目はチェスっぽいわよ。」
そう言って見せられたのは、確かにチェス盤を連想させる白黒のメダル。
アナベルはへー!と興味を覚えたものの、困ったように微笑んで首を振った。
「面白そうだけど、今は無理だわ。
今からハグリット先生のところに行かなきゃいけないの。手伝ってほしいことがあるんですって。」
アナベルの言葉にジニーは残念そうな顔をしたが、ハグリットなら仕方ないと頷く。
「ハグリットの頼みなんじゃ、仕方ないわね。
じゃあ、帰ってきてからハリー先輩たちも誘ってみんなでやりましょうよ。」
「うん、そうね。」
アナベルは笑って友人と別れ、そわそわしている子猫のナイルを抱えたまま今度こそ談話室を出た。
最近やたらと迷子のダームストラング生に出くわすのだが、本日は誰にも呼びとめられず、順調に進めた。
珍しく雪が降っていないことにほっとしつつ、中庭に出れば、
細い木の陰に、しっかりとコートを着込んだ人影。
アナベルも腕の中の子猫も途端に、ぱっと目を輝かせる。
「ドラコ先輩!」
周りに人がいないことを確かめつつ、アナベルが駆け寄れば、
プラチナブロンドの少年はにっこり笑って、少女と子猫を出迎えた。
「早かったな、アナベル。ナイルも。」
ドラコがすっと手を伸ばして、アナベルの腕の中の子猫を撫でれば、
砂色の子猫は、嬉しそうにごろごろと喉を鳴らした。
相変わらず、飼い主共々ナイルはドラコのことが大好きなのだ。
アナベルはご機嫌の子猫の様子に笑いながら、ドラコと並んで歩いた。