第3部

□第23の枝 クリスマスプレゼントの準備
1ページ/7ページ








 ― あーふ。



小さな口を開けて、そんな可愛らしい欠伸をする子猫が一匹。


砂色の艶やかな毛並みにスポット模様の混じるその子猫は、
グリフィンドールの女子寮の寝室で、ご主人のベッドに寝そべっていた。




冬場で相変わらず気温の低い寒い日だったが、子猫のいるこの寝室はとても暖かかった。

おまけに、子猫専用にもらったふわふわしたブランケットもあり、
砂色の子猫はご機嫌で、その上に丸まっている。



元々野良の出身だった子猫は、
今の優しいご主人に拾われて以来、快適そのものの生活を送っているのだ。

もう、1年以上前になるだろうか。



意地の悪い人間どもに苛められているところを、
今のご主人である少女と、その連れ合いの少年に助けられた。

治療してくれた上傍に居させてくれたその少女は、
第一印象に違わず、人間とはとても思えないほど優しかった。

その上、子猫の鳴く声を理解してくれるという類稀なる才能も持っていたりする。




 「にゃーぉ。」




一声鳴き、砂色の子猫はゆっくりと体を起こし、伸びをする。

クリスマスが迫っているこの冬場、陽が落ちるのが驚くほど早い。
窓の外が段々と薄暗くなっていくのを見ながら、子猫はご主人もそろそろ帰って来る頃だろうと考えた。



 ― とん、とん、とん。



と、予想に違わず、子猫の優秀な耳が微かな足音を捉えた。階段を上がってくる音だ。



 「にゃー。」



満足げに子猫が鳴いた時、同時にがちゃりと音がして寝室のドアが開いた。




 「ただいま、ナイル。いい子にしてた?」




ベッドの上の子猫を見るなり、にっこりと笑みを浮かべたハシバミ色の目の美しい少女。

ご主人様のお帰りである。



 「にゃーお。」



嬉しそうにヒゲをひくつかせながら鳴く子猫に、
その少女、アナベル・ポッターは笑って、よしよしと子猫の小さな頭を撫でてやった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ