第3部
□第26の枝 不法侵入者と命懸け鬼ごっこ(後篇)
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ホグワーツ魔法魔術学校。
たくさんの少年少女たちがその寮で生活するホグワーツは、
どちらかというと、朝の時間帯が一番静かといえば静かであった。
が、しかし。
クリスマスを目前に控えたその日、ホグワーツの朝はこんな叫び声で始まった。
「僕の天使ぃぃぃーーー!!!どこだーーーい!!」
言わずもがな、アナベル・ポッターの超絶過保護な親馬鹿、ジェームズ・ポッターである。
ついでにいえば、不法侵入者でもある。
その叫び声に叩き起こされた生徒たちは、訳も分からず、
叫びながら走って、誰かを探しまわっている成人男性に、一様に引き攣った目を向けた。
その悲痛な声音にともすると同情しそうにはなるのだが、
何分、叫んでいる内容が内容なので、実際に同情するに至る生徒はいない。
むしろ、その勢いが恐ろしく、ほとんどの生徒は引いており、
時折、『ちょっ、僕の天使を見なかった!?!?』という問いかけに、ぶるぶる首を横に振っていた。
が、ごくごく一部の生徒、ホグワーツに存在する4寮のうち、スリザリン寮の生徒たちだけは、
怯えながらも、さすがに素早く事情を察し、行動を起こしていた。
まずは、数人の上級生が急いで我らが寮監、セブルス・スネイプのもとへと走った。
「スネイプ先生!!大変です!!
アナベル・マル…いや、ポッターの父親がホグワーツ中を娘を探して走り回ってます!!」
― ぶふっ!!!!
早々と起き、分厚い石壁に囲まれた地下の自室で、
のんびり、紅茶を飲みながら仕事を進めていたスネイプは、第一声を聞いて盛大に紅茶を噴き出した。