第3部

□第27の枝 決戦の時!クリスマスダンスパーティー(前篇)
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トライウィザードトーナメントの第3の課題が行われる前。

特別に企画されたクリスマスダンスパーティーの日。




その日は、朝から雪が降り続いていた。

それでも、吹雪の様な激しいものではなく、さらさらと軽やかに降り注ぐ粉雪。

素敵なホワイトクリスマスになると、
ホグワーツの女子たちも、ホグワーツに滞在中の他校生も一様に喜んでいた。



特に女子たちが気合を入れて、パーティーの何時間も前から支度を始めようとしている頃、
地下のスリザリン寮の入り口の前に、2つの人影があった。



冬場は特に薄暗くなる、その地下の廊下に立っていたのは、
一人は、きっちりとスーツのようなローブを着こなした職人風の初老の男性。

その向かいに立って、何やら小さな小箱を受け取っているのは、

乏しい明かりの中でも美しく輝く、ミルクティーブラウンの髪の持ち主、
グリフィンドールの2年生、アナベル・ポッターだった。



アナベルは小さな小箱をぱちんと開け、中を確認すると嬉しそうに顔をほころばせた。

そして、向かい合う初老の男性に丁寧に頭を下げた。



 「ばっちりです。こんな素敵に仕上げていただいて、ありがとうございました。
それに、随分急がせてしまって…。」


 「いやいや、とんでもない。」



職人風の品の良い男性は、アナベルが軽く頭を下げるのを見て、慌てたように手を振った。



 「クリスマスプレゼントだろう、というのはわかりますからな。
クリスマスまでに仕上げるのは、当たり前ですよ。お役に立ててよかった、Ms.マルフォイ。」


 「はい。わざわざホグワーツにまで届けていただいて、ありがとうございます。」



そう言って微笑むアナベルに、プロの宝石職人であるその魔法使いは内心でやや面喰っていた。


自分は注文の品を仕上げて届けただけなのだが、ここまで丁寧にお礼を言われるとは思ってもいなかった。

おまけに、貴族が職人風情に、
お礼だろうがなんだろうが、頭を下げるというのはなかなかあり得ないことでもある。




 (こりゃぁ、噂通りだなぁ。)




優しく美しく、聡明で礼儀正しいマルフォイ家の若奥様。

本当かどうかかなり怪しい噂だと思っていたものの、こうして本人に会ってみれば疑いようもない。


いいお客にいいものを造ってやれたと、初老の男性は顔を緩めた。




 「喜んでいただけて何よりですよ。では、わたしはこれで。」



来客としてスリザリン寮の暖炉から来た男性は、
そう言って頭を下げると、スリザリン寮の中へと戻っていく。


それを見送り、アナベルは小箱をローブの中に大事にしまって、自分もグリフィンドール寮へと戻った。


皆、すでにパーティーの準備に入っているのか、暖炉が赤々と燃えるグリフィンドールの談話室は、
数人の男子生徒がだらだら座っているだけで、ほとんど人がいない。


私も急がなきゃ…とアナベルは、早足に女子寮へと上がっていった。
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