第3部
□第29の枝 成長した天使の卒業式
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「ウィーズリーせんぱーい!」
柔らかな日差しの午後。
後ろから軽やかに声をかけられ、
廊下を歩いていたその燃えるような赤毛の少女、ジニー・ウィーズリーは、くるりと後ろを振り返った。
「あら、ハンナ。リザも、どうしたの?」
ジニーの元へ駆け寄ってきたのは、同じグリフィンドールの後輩だった。
2人とも、今年卒業…というか、今から1時間後に卒業式を控えたジニーの4つ下の3年生だ。
2人はジニーの前で顔を見合わせ、にっこりと笑って持っていた小さな花束を差し出した。
「あの、卒業おめでとうございます、ウィーズリー先輩。」
「先輩にはお世話になったから、お礼がしたくって。」
口々にそう言ってくれる後輩に、不意をつかれたものの、ジニーは感動してしまった。
ジニーは4年生の時に、友人・アナベルポッターとともに、
マクゴナガル先生から、監督生の任を仰せつかっている。
で、本日の卒業まで、その務めを果たしてきたのではあるが、
どちらかというと、後輩が馬鹿なことをしないように見張り、注意する監督生は、
口うるさい先輩として、煙たがられるのが普通だった。
それでも、親身になって後輩の世話を焼いている監督生の中には、
こうして稀に後輩に慕われ、感謝される人間もいるのだ。
それが、自分にもまさか当てはまるとは思っておらず、ジニーは驚いてしまったが、
しみじみとした気持ちになって、有難くそのミニブーケを受け取った。
「ありがとう、2人とも。すっごく嬉しいわ。」
そう言ってジニーが微笑めば、後輩2人も嬉しそうに笑い返してくれた。
「恋愛相談とか、とにかくウィーズリー先輩にはいろいろ相談に乗ってもらったし。ね?」
「そうそう。本当、お世話になりました。」
もう一度そう言って、ぺこりと頭を下げて去っていく2人の後輩を見送り、
ジニーは花束を抱えて、じーんと感動しながらグリフィンドール寮へ戻った。