第3部
□第10の枝 恋人たちのハッピーハロウィン(前篇)
2ページ/6ページ
「あ。そういえば、今日ってあれじゃない!
トライウィザードトーナメントに参加する、他の学校の歓迎会でしょ?」
「あー!そうよ、とうとうその日が来たのか!」
ジニーの言葉に、他のルームメイトたちもあー!と声をあげた。
そして、なぜか身支度に気合を入れ始めた。
一気にテンションが上がったらしい友人たちに、アナベルは髪を梳きながらこてんと首をかしげる。
「それはそうだけど…なんで、みんなそんなに楽しみにしてるの?」
不思議そうなアナベルに、ルームメイトは顔を見合わせた。
「あー…そうね、アナベルにはあんまり関係ないかもね。」
「そうそう。素敵な旦那さまがいらっしゃるもんねー。」
口々にからかわれるように言われ、アナベルはますますきょとん顔になる。
ジニーも笑いながら、必要な教科書を鞄に詰め込んだ。
「あのね、アナベル。アナベルはともかく、他の女子は結構前から、この日を楽しみにしてたのよ。」
「??どうして?」
髪を梳く手は休めずに、アナベルは説明を求めるようにジニーに顔を向けたが、
アナベルの疑問に答えたのは、勢い込んだルームメイトの方だった。
「どうしてって、あのね!他の魔法学校の生徒と会う機会なんて、まず、ないじゃない!
新しい出会いがあるかもしれないでしょ!」
「そうそう。イケメンいないかなぁ。」
手早く髪を結びながら、もう一人のルームメイトもそう同意する。
なるほど、そういう考え方もあるのかと納得しているアナベルの傍らで、ジニーもうんうんと頷いた。
「そういえば、ダームストラングの代表選手はあのビクトール・クラムでしょ。
女子だけじゃなくて、男子も楽しみにしてるみたいよ。」
「あー、そりゃそうでしょうね。クイディッチのプロ選手と会話する機会なんて、それこそ普通ならあり得ないもの。
アナベルのお兄ちゃんも、楽しみにしてるんじゃない?」
ルームメイトに聞かれ、アナベルは櫛を置いて手で指通りを確かめながら、
そういえば、そんなことを楽しそうに言っていたなぁと思い出した。
その時、その場にアナベルの大嫌いなランスロット・ベイがいて会話に加わっていたので、意識的に忘れていたが。