第3部

□第10の枝 恋人たちのハッピーハロウィン(前篇)
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 「そういえば、そう言ってたかも。じゃあ、今日はハロウィンっていうより、そっちがメインなのね。」


 「「そりゃそうよ!」」



ジニー以外のルームメイトに声を揃えて言われ、アナベルは笑ってしまった。

確かに、悪戯好きの双子、フレッドとジョージでもなければ、
料理がかぼちゃ尽くしになるハロウィンを、そこまで楽しみにする生徒もいないのかもしれない。


だが、アナベルにとっては、ハロウィンはとても大切な日だったりするのだ。

そう思いながら、ブラッシングにようやく満足して手を休めるアナベルを、ジニーは不可解そうな目で眺めた。



 「でも、なんだかアナベルも気合入ってない?
別に、ハロウィンを楽しみにしてるわけじゃないでしょ?」



ジニーに聞かれて、アナベルはとんでもないと首を振った。



 「私にとっては、ハロウィンの方が特別な日なの。
それに、対抗試合の生徒歓迎会なんて、大騒ぎになりそうでちょっと嫌だし。」



自分でそう言いながら、まだ記憶に新しいクイディッチワールドカップでの人混みを思い出してしまい、
アナベルは、少しばかり微妙な顔をした。

そんなアナベルの横で、ジニーもまたあることに思い当って、物凄く微妙な顔になる。

そうか、ハロウィンって……。



 「……あー…なるほどね。」



そういえば、そうだった。

微かにそう呟くジニーに、
あらかた身支度を終えた2人のルームメイトが、身を乗り出すようにして好奇心を示した。



 「なになに?何かあるの?」


 「なるほどって?なんで、アナベルにはハロウィンが特別な日なの?」



口々に質問し出すルームメイトを前に、
ジニーはふんふんと楽しそうにネクタイを結んでいる友人を横目で見て、ため息を飲みこんだ。


 「さー?アナベルに聞いてみたら?」


ジニーがそう言って、我関せずと逃げようとしたとき。
不意に、ばさばさと羽音が窓を打った。



 「「「?」」」



一斉に窓の方を見れば、大きなワシミミズクがその嘴でコツコツとガラスを叩いていた。

普通、朝のフクロウ便は、生徒が大広間で朝食をとっている時に飛んでくるはずなのだが。
おまけに、そのミミズクは何も運んでいない。



 「一体なに?」



アナベルが口を開く前に、ルームメイトがそう言いながら杖をひと振りして窓を開けてやった。

すると、空手の大きなワシミミズクは、スーッと滑らかな滑空を見せて一目散にアナベルのベッドヘッドに着地した。
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