第3部

□第11の枝 恋人たちのハッピーハロウィン(後篇)
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 「あー、ほんとお腹いっぱい!すぐには寝れないわ。就寝時間までまだあるし…談話室にでも行く?
きっと、ハリー先輩たちが歓迎会のこととか、わいわい喋ってるわよ。」



ジニーはちょっと考えてそう提案したのだが………
綺麗に梳いたミルクティーブラウンの髪を揺らす少女は、はにかんだように微笑んだ。



 「その、ごめんね、ジニー。私、今からドラコ先輩のところに行って来る予定なの。」


 「今から!?!?」



なっ、なんだと!?

ジニーが思わず大声で聞き返すと、アナベルは慌ててその口を手で塞いだ。
周りを見回すが、まだルームメイトは返ってきていないし、大方の生徒は談話室にいるらしい。

アナベルはしーっとジニーに合図してから、困ったように笑った。



 「ほら、今朝薔薇をもらったでしょ?お礼を言いたいし…。」


 「ああ…。」



そういや、嫌に気障なメッセージとともに純銀の薔薇なんて貰ってたなぁ。

ジニーは今朝がたのことを思い出して、ため息を飲みこんだ。

これは何を言っても今更止められないだろう。
そう悟った赤毛の少女は、渋々頷いた。



 「……あんまり遅くならないようにね。」


 「うん!じゃあ、いってきます!」



本当にわかってるのだろうかと疑いたくなるほど、
愛らしいハシバミ色の目の少女はにっこりと笑って、いそいそと寮から出て行ってしまった。


兄であるハリー先輩に見つからないように、談話室を抜けられればいいけど…とジニーは心配したが、
その心配もないほど、グリフィンドールの談話室は込み合っていた。

やはり、初めて他の魔法学校の生徒を見た者がほとんどなのか、
制服や見た目などについて、いろいろとお喋りしているらしい。




 「ねえねえ、ビクトール・クラム見た?」


 「ボーバトンの制服可愛かったねえ!寒そうだったけど。」


 「美女揃いだったよなあ。特にあの代表選手だっていう子!」


 「ヴィーラがいたんだよ、ヴィーラ!ほんとだって!」




わいわいと、グリフィンドール生たちが言い合っている会話を聞きながら、
アナベルはそっと談話室を抜けて、薄暗い廊下へ出た。

ホグワーツの明かりは、就寝時間が近くなってくると、
徐々に暗くなっていく仕様になっているので、もう随分と薄暗くなっている。



 (急がなくっちゃ。)



思ったよりも歓迎会が終わるのが遅くなったせいで、時間が押している。

アナベルはいそいそと地下室へ向かいながら、杖を取り出して、そっと自分の体に向けた。

心の中で呪文を唱えれば、ローブに下に、ひんやりと体温が馴染んでいない新しい服の感触。
アナベルはちらりとローブの首元から中を覗き込み、着ている衣装を確認すると、満足げにうなずいた。



 「これでよし。」



最後の仕上げは、今朝フレッドとジョージの双子に約束通りもらった変身キャンディを食べるだけだが、
あれは過去の経験から言っても、最後の最後にしたほうがいい。


アナベルはそう思いながら、杖をしまって地下への階段を下りた。
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