第3部

□第11の枝 恋人たちのハッピーハロウィン(後篇)
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一段と薄暗い地下の廊下を進めば、すぐにスリザリン寮への入り口が見える。

しかし、そこに立っていたのはドラコではなかった。



 「あー…やあ!」


 「?…あ、ベイジー先輩、ですよね?」



そう、そこに立ってアナベルを待っていたのはベイジー。

休暇中、ダイアゴン横町で出くわし、ドラコに一度紹介してもらったことをアナベルはちゃんと覚えていた。
だが、ドラコはどこにいるのだろう?

不思議そうなアナベルに、ベイジーは困ったような顔をしながらも説明する。



 「ええと、悪いね。ドラコの奴、急な監督生の用事で他の奴と一緒に、スネイプ先生のところに行ってるんだ。
代わりに部屋に案内しろって言われてさ、俺が待ってたってわけ。」


 「そうだったんですか。わざわざすみません、ありがとうございます。」



ドラコの部屋には二度ほど来たことがあるので、場所は知っていたが、
やはり、スリザリン寮の中をグリフィンドールのアナベルが歩きまわるのはまだ相当勇気がいる。

ベイジーが待っていてくれてよかったと、アナベルはほっと一安心して微笑んだ。



 「…………!じゃ、じゃあ、行こうか。」



一瞬アナベルの笑顔をじっと眺めていたベイジーだったが、途端に原因不明の寒気を感じて、慌てて我に返った。

危ない、危ない。
ドラコ・マルフォイの恋人に見惚れるなんて、とんだ自殺行為だ。

ベイジーは自分を戒めつつ、アナベルを案内して肖像画の入り口を抜けた。



 「こっちだよ。」


 「はい。」



談話室を抜けて案内するベイジーに続き、アナベルも出来るだけ目立ちませんようにと祈りながら歩く。

が、アナベルの祈りも虚しく、アナベルを見た途端物凄い勢いで向けられる、数多くの視線が突き刺さってきた。



 「………;」



男子からも女子からも、穴が開くんじゃないかと言うほど見つめられて、
アナベルは気後れしながら、慌ててベイジーの後ろを進んだ。

寮の監督生の小部屋へ行けば、さすがにすれ違う人間もおらず、アナベルはほっとする。



 「よし、ここだ。あー、でも鍵かかってるよな。」



あのドラコが、自室に鍵をかけずに外出することなどない。

今更それを思い出したベイジーだったが、
アナベルは微笑んで、すぐにローブのポケットから金色のカギを取り出して見せた。



 「大丈夫です、ベイジー先輩。鍵なら、前貰ってたので。」


 「ああ、そう…。」



そりゃそうか。

ベイジーは納得して、少女が部屋に入ったらさっさと退散しようと思っていた…のだが。



 「ベイジー!ベルは…。」


 「あ、ドラコ先輩!」



アナベルがその小さな金色のカギを差し込む前に、ベイジーの後ろからドラコが小走りにやってきた。



 「ベル!すまないな、迎えに行けなくて。でも、ちょうどよかった。」



ベイジーをスルーして、まずはアナベルに話し掛けるドラコ。

アナベルは嬉しそうに笑んだが、すぐに首をかしげて見せた。



 「でも、ドラコ先輩、監督生の用事だったんじゃ?」


 「ああ、そうだったんだけどな。
今からアナベルと会う約束をしてるって言ったら、スネイプ先生が免除して下さったんだ。」



ドラコはそう答えながら、スネイプのことを思い返して微笑む。

最近では毎回そうだが、スネイプがドラコに用事を頼むときは、必ず最初に予定はあるかと聞く。
今回もそうで、ドラコが正直にアナベルと約束があると言えば、速攻で帰っていいと言われてしまったのだ。



 「スネイプ先生、やっぱり優しいですね!今度お礼を言っておきます!」



さすがスネイプ先生!と笑うアナベルの後ろで、ベイジーは微妙な顔をしていた。
新たなスクープだ、これは。

まさか、我らがスリザリンの寮監までも、このカップルのことを知っているのだろうか。

ていうか、むしろ応援してます?


そんなことを考えて唸っているベイジーに、
ドラコは、部屋のかぎを開けてアナベルを中に入れながら、あっさりとその肩を叩いて見せた。



 「御苦労だったな、ベイジー。もういいぞ。あ、見回りはよろしくな。」


 「あっ、その件!そうだよ、なんだって、俺が見回り…。」


 ― ばたん。



ドラコの言葉で、見回りを交代で押しつけられたことを思い出し、
ベイジーは慌てて、撤回してもらおうと声をあげたのだが。


無情にもドアはベイジーの言葉を遮って、しっかりと閉められてしまっていた。
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