第3部

□第12の枝 ジニーの悩み事
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と、地下へ下りる階段が見えてきたところで、ジニーは壁のように背の高い人物と鉢合わせしてしまった。



 「わ!」


 「おっと!こりゃ、すまん!」



轟く様な声に顔をあげてみれば、そこにいたのはルビウス・ハグリット。

ジニーはぶつけそうになった顔を引いて、大丈夫と手を振った。



 「ほい、ジニーじゃあねぇか!今日は休みだろう?朝からどうしたんだ?」



よく、ハリーたちとハグリットの小屋を訪れるジニーは、
この気のいい森番兼魔法動物飼育学の教師とは仲が良かった。

ジニーが朝に弱いことを知っているハグリットが不思議そうな顔をすれば、ジニーは困ったように苦笑する。



 「ちょっと、いろいろあって。ハグリットこそ、どうしたの?」



こんなところ、地下へ行くしかないような廊下でハグリットと出くわすのも珍しい。

今更ながらそう思ってジニーが聞くと、ハグリットは丁度良かったという顔をしていた。



 「そうだ、ちょうどよかった。実はアナベルを探しちょるんだが、居所を知らんかい?」


 「え、アナベル?」



ジニーは目を丸くする。
どんな因果か知らないが、今朝はアナベルに用のある人物が多いらしい。



 「うーん、実はわたしもアナベルに用があって、探してるところなの。」



正直にそう言えば、ハグリットはそうかと頷いた。



 「じゃあ、やっぱしマルフォイに聞いた方が早ぇな。」


 「そうそう、だからわたしも地下に……………って、はい!?」



思わず大声を出してしまったジニーに、ハグリットが面喰う。



 (え………あれ!?なんで、ハグリットがそういう思考に…?)



自分は昨夜、最後にアナベルと会話して、マルフォイのところへ行くと聞いた。
で、未だに帰ってきていないのだから、そこにいるのだろうと容易く予想したのだが。

なんの予備知識もないハグリットが、
なんで一足飛びに、アナベルの居場所をマルフォイに聞こうと考えたのだろう。



 「ど、どうかしたか?」



目の前のハグリットは、考え込むジニーを見てなぜかうろたえている。

その様子を見て、ジニーは大体の事情を察した。


そういえば、去年、バレンタインチョコを作っていた時、マルフォイがアナベルを連れて行ってしまう際に、
ハグリットのところへ犬を見に行くとかなんとか言っていた記憶がある。

もしかしたら、マルフォイはアナベルを連れてよくハグリットのところに行っているのかもしれない。

ハリーもよく訪れる場所だから、ハグリットには口止めしているのだろう。



 「………とは思うけど、あの純血主義のお坊ちゃんがハグリットの小屋を訪れるもんかしら。」



いくら、アナベルのためとはいえ。

少々ジニーは懐疑的だったが、
ハグリットが困ったような顔をしているので、慌ててなんでもないと両手を振った。

あの2人の関係を知っているのか、問い質したいところだったが、
この嘘が下手な純朴なハグリットを困らせるも、ジニーの本意ではない。



 「なんでもないわ!あ、そうだ、ハグリット!
どうせ、わたしもアナベルを探しに行くんだし、何か用事があるなら伝えておいてあげましょうか?」



ジニーの様子に戸惑っていたハグリットも、それを聞くと目を輝かせた。



 「おお、そうか?そうしてくれると、助かる。」


 「お安い御用よ。なんて伝えればいいの?」



ジニーがほっとして、そう聞いた時。

2人がその時立っていた地下に下りる階段の下で、突然、壁にかかっている梨の絵画が開いた。


 「!」


そこは、厨房への入り口で、そのことを知っている生徒は多い。

ジニーも双子に聞いて知っていたので、
そこから生徒が出てきても驚かなかったのだが……さすがに、今回は驚いた。


なぜなら、そこから出てきたのが、片手にトレーを持ったドラコ・マルフォイだったので。
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