第3部

□第13の枝 ドラゴンに懐かれる少女
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 「そうよ、チャイニーズ・ファイヤボールっていう種類のドラゴンだと思うわ。」


 「それ、どれくらい危ない奴なの?」



クラムに勝ち目はあるのだろうかと、ハリーが口を挟んだ。

アナベルは無邪気に、こてんとそのミルクティーブラウンの髪を揺らす。



 「危ないっていうより、可愛いじゃない、お兄ちゃん。
それに、卵を守ってるんだから、神経質にはなってると思うけど。」



本当は動物をこういう競技に使うのは、アナベルは好きではない。

そう思って僅かに顔を曇らせるアナベルの隣で、ハーマイオニーも頷いた。



 「それに、ドラゴンはどれだろうと、危なさには変わりないと思うわ。」


 「同感。」



アナベルの『可愛い』発言をなかったことにして、ロンも同意する。
そして、クラムが果敢にも杖を掲げて深紅のドラゴンに近づいて行くのを息をつめて見守った。




 「にしても、こっから見るとえらい大きさの違いだな。」


 「ほんとほんと。マッチ棒でトロールに立ち向かってるようなもんだぜ。」



少し離れた席で、フレッドとジョージの声がする。

その会話を聞きながら、ジニーも内心でまったくだと納得していた。

とてもじゃないが、客観的に見てクラムに勝ち目があるようには見えない。

以前アナベルが、トライウィザードトーナメントに出場するなんて、
死にに行く様なものだと言っていた意味が、ようやくわかった気がする。



 (ほんと、どうやって卵を奪う気なんだろ。)



見当もつかないと、心底不思議に思っていたジニーの疑問は、次の瞬間一応答えが出た。

危険なほどドラゴンに近寄っていったクラムが、素早くドラゴンの棘だらけの尾をよけて、杖を向けたのだ。
杖の先から出た光線が、ドラゴンの目に直撃する。



 「やっぱり!『結膜炎の呪い』だわ。ドラゴンの弱点なんて、目くらいしかないもの!」


 「結…なんだって?」



やっぱりねと声をあげるハーマイオニーに、
ロンが苦しんで暴れまくるドラゴンを見下ろしながら、片耳に手を当てて聞き返す。

が、アナベルは2人にも大騒ぎの観客たちにも構わず、パッ!と立ち上がっていた。



 「ベル!?」



突然席から立ちあがったアナベルにハリーが驚いて声をかけるも、
アナベルはすでに、素早く通路まで駆けだしていた。
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