第3部

□第13の枝 ドラゴンに懐かれる少女
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 「どこ行くんだい、アナベル!」


 「決まってるじゃない、お兄ちゃん!チャーリーさんのところに行くのよ!
あの可哀想なドラゴンが、すぐ治療に運ばれてくるわ!」



今にも駆けだしそうなアナベルに、慌ててストップをかけるハリー。

アナベルはそのハシバミ色の目を心配に曇らせて、痛みに暴れ狂っているドラゴンをちらちら見つめている。



 「もともとこの後、ドラゴンを見に行く予定だったでしょ?」


 「そ、それはそうだけどさ…。」



ハリーが言い淀んだ時、再び観客席が盛大に湧いた。
クラムが卵を奪うのに成功したらしい。

アナベルは我慢できず、ぱっと駆けだしてしまった。



 「ちょ、アナベル!ロン、行くぞ、アナベルを追うんだ!」


 「えー!?ハリー、まだ試合の途中じゃないか!」



ロンは残念すぎる声を上げたが、ハリーは構わずその襟首を引っ掴んでアナベルを追った。


可愛い妹を、一人であんな危険なドラゴンに会わせるわけにはいかない!


ロンを引きずりながら走り出したハリーに、
ハーマイオニーとジニーも一瞬顔を見合わせ、急いで席を立って後に続いた。



 「わかった!わかったよ、ハリー!走るから!」



引きずられていたロンも、情けない声をあげて自分で走り始める。

だが、美しい髪をなびかせて走るアナベルは、とっくに小さな点になっていた。



 「速っ!?アナベル、速い!」



あんな足速い子だったっけ!?とロンが叫べば、ハリーも全速力で走りながら器用に肩をすくめた。



 「アナベルは昔から、動物のことになるとパワーが違うんだよ。」


 「納得。」



ため息をつきながらも、ロンは頑張って走った。

しかし、なぜアナベルはああも一目散に走って行けるのだろう。
ドラゴンのいる場所をすでに知っているのだろうか?


そんな疑問がちらりとロンの頭をかすめたが、その答えを知っているのは残念ながらジニーだけだった。

ジニーは今朝早く、アナベルがドラコに連れられてすでにドラゴンを見に行っていたのを知っている。
ジニー自身、アナベルたちについてチャーリーに会いに行ったからだ。


が、ドラコ・マルフォイが絡んでいるので、これは口が裂けても言えない。


ジニーはハーマイオニーとともに息を切らせて走ることに専念した。
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