第3部

□第13の枝 ドラゴンに懐かれる少女
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そして、ハリーたち4人はアナベルに後れを取りつつも、
なんとか、会場から離れた場所にあるドラゴンたちのいる区域に到着した。



いくつかの檻が並び、その中には、
出番を待つドラゴンと、出番の終わったドラゴンたちが不機嫌そうに蹲っている。


その中でも特に機嫌が最悪そうなのは、無論、クラムと戦ったドラゴンだろう。


ハリーたちが到着した時には、すでに会場からそこに移されて来たところだったようだ。

とんでもない地響きを立てて足を踏みならし、
キノコ型の炎を吐き、むちゃくちゃに尻尾を振りまわして暴れている。

その腹に響く咆哮に、ハリーたちはもれなく全員後ずさった。



 「あれ…ハリー!ジニーたちも!」



一歩も前に進もうと思えず、固まってしまったハリーたちに気付いたのは、チャーリー・ウィーズリーだった。

頑丈なブーツを履き、つなぎのようなものの上からローブを羽織っている。
周りにも、似たような格好のドラゴンキーパーたちが大勢いて、ドラゴンの世話をしていた。



 「もう、ドラゴンを見に来たのか?」



チャーリーは、アナベルが再びハリーに連れられて来ることを知っていたので、あまり驚いた顔もしていない。



 「やあ、ハーマイオニーも久しぶりだね。
また会えて嬉しいんだが、今はちょっとここで待っててくれ。

見たらわかるだろうけど、一匹とんでもなく機嫌の悪い奴がいてね。」



ドラゴン好きのチャーリーは、引き攣った顔をしている4人の前で、事もなげに笑っていた。



 「あ、あの…大丈夫なんですか?柵を壊したりとか…。」



危なっかしいほどグラグラ揺れている柵を見て、ハーマイオニーが恐る恐る尋ねる。

クラムと戦ったドラゴンは、檻ではなく、円形に柵で囲まれた中で暴れている。
その周りに大勢のドラゴンキーパーたちが群がって、なんとかドラゴンを落ち着かせようと苦労していた。


ロンも、なんで檻に入れないんだよと青い顔で呟いている。

だが、チャーリーはあっさりと肩をすくめた。



 「手負いのドラゴンは、檻に押し込めたりしたら、余計暴れるんだよ。

檻や柵は専用の呪文がかかってるから早々壊れる心配はないけど、
ドラゴンが体をぶつけて、自分を傷つける恐れがある。」


 「………わたしたちが食べられちゃう恐れ、っていうのは考えないわけ?」



さりげなくロンを盾にして後ろに隠れながら、ジニーも文句を言ったが、
チャーリーは面白い冗談だと思ったらしく、のほほんと笑っていた。



 「まあ、そう怖がるなよ、4人とも。もう少ししたらあいつも収まるさ。
ところで、肝心のアナベルはどうしたんだい?」


 「そうだ、アナベル!!」



チャーリーの何気ない言葉に、ハリーははっと妹のことを思い出した。



 「アナベルは先に、ここに来たはずなんだ!
走り出しちゃって、僕らがそれを追ってきたんだよ!チャーリー、見てない!?」


 「え?そうなのか?見てないなぁ。」



とはいっても、チャーリーは仕事中は人間よりも先にドラゴンに目が行く。

慌てて辺りを見回しているハリーにならい、チャーリーも改めて周囲に目をやった。


相変わらず大暴れしているドラゴンにビクつきながらも、
ロンやハーマイオニー、ジニーも目を彷徨わせて、アナベルを探す。
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