第3部

□第14の枝 怪我の功名
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 「何をしてるのかと、聞いたんだが。」



冷たい声でそう繰り返すのは、
透き通るようなプラチナブロンドの髪をして、鋭いアイスブルーの目をした監督生だった。


ネクタイは深緑と銀色。スリザリンの監督生だ。


本来であれば、出くわしたのが同じ寮の監督生であって、ラッキーだとほっとするはずだったのだが。

その恐ろしく冷たいアイスブルーの目で見降ろされて、少年たちは揃ってすくみあがった。




 「……。」




その監督生、ドラコ・マルフォイは立ちすくむ4人の少年たちをじっくり見下ろしながら、
遮っていた片足を、静かに下ろした。

同時に、その足に止められていた少年の足も、力なく下がる。

かつん…という音が、重苦しい沈黙の中に響いた。



 「……スリザリン生か。」



居並ぶ少年たちのネクタイの色を確認し、ドラコは苦々しげにため息をついた。


その無言で滲みでる圧力を感じ、少年たちは声を出せなかった。
同じスリザリン生だからこそ、知っている常識もある。

スリザリンというのは、生徒たちがこれから歩んで行くであろう社会に負けないような寮だ。
きっちりとした上下関係。力、家柄の差。

そういうものを認識し、特に誰に逆らってはいけないのか、年下であればあるほど自然に悟っていく。

そうでないと暮らしていけないのが、スリザリン寮だ。


1年生、すなわち新入生である彼らも、しっかりとすでに寮内の力関係を把握している。

絶対に逆らってはいけない人物、その筆頭が目の前の監督生だった。



ドラコ・マルフォイ。
マルフォイ家の跡取りで、寮監のセブルス・スネイプの恩寵も一身に受ける特別な人間。

その上、能力にも恵まれており、ひどく頭が切れる。

そして、時に情け容赦ない。




重苦しく続く沈黙に、少年たちの額にじっとりと嫌な汗が浮いてくる。

そんな少年たちを見下ろすドラコの目は、どこまでも冷ややかだった。



 「朝からなんの騒ぎかと思えば…。情けない。スリザリン生が4人も揃って、動物苛めか?」



吐き捨てるように言われて、ますます少年たちは縮みあがった。



 「くだらないことをするな。」



ドラコの言葉は、鞭のようにぴしゃりとその場の空気を打った。

びくりと、少年たちが体を揺らす。
誰も顔をあげられなかったが、ドラコが無言で石畳を蹴りつければ、一斉に汗の滲んだ顔をあげた。

そんな一人一人の顔を絶対零度の目で射すくめ、ドラコは噛んで含めるように言った。




 「スリザリンの品格を疑われるようなことをするんじゃない。…いいか、覚えておけ。
血統正しい我がスリザリン寮に、猫を虐めて悦に入るようなチンピラじみた愚か者はいらない。」




ドラコの言葉に、4人の少年たちの顔が一斉に青ざめる。


スリザリンでは、あり得るからだ。

この力を持つ監督生の一言で、スリザリン生なのにスリザリン生と認められなくなることが。
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