第3部
□第15の枝 見えない警備体制
2ページ/8ページ
かさり…と、上質な厚い便せんに書かれた手紙を読み終え、
口元に微笑みを浮かべた少女は、そっと手紙を置いた。
グリフィンドールの女子寮。
朝早く、ワシミミズクが運んできてくれた手紙を読んでいたのはアナベル・ポッター。
手紙と一緒に届けられた包みを開けてみて、アナベルは嬉しそうに笑った。
「わぁ、美味しそう!」
鮮やかな緑と黄色とブルーの包装がされた袋を開けると、甘酸っぱい匂いが漂ってくる。
アナベルは早速、そのドライキウイを一つ摘まみ上げて、口に含んだ。
「!んー、美味しい!ナイル、ほら、あーん。」
「なぁー。」
ひょこり…と枕の下から出てきた子猫にドライフルーツを差し出せば、子猫も喜んでそれを小さな口でくわえた。
「美味しいでしょう?」
ご機嫌顔でフルーツを咀嚼するナイルを見ながら、アナベルはちらりと時計に目を移した。
「こんなにいっぱいあるし…みんなにも分けてあげようかな。」
アナベルの言う『みんな』というのは、大抵の場合動物を意味している。
今回も、アナベルがドライフルーツのおすそ分けに行こうかなと考えたのは、
禁じられた森の小動物たちだった。
一人で森の中に入ってはいけないと、プラチナブロンドの恋人に言いつけられているので、
アナベルが一人で森に入ることはないが、
傍を散歩したり通りかかったりするだけで、ひょこひょこ動物たちが顔を出してくれるのだ。
2,3日前、まだ小さなアナグマの仔に会ったことを思い出して、アナベルはよし!と立ち上がった。
「ナイル、私、森に行ってくるわね。一緒に来る?」
「にゃーぅ。」
コートを着ながら一応聞いてみたのだが、
やはり、今よりも早い夜明けごろに散歩を一度済ませていた子猫は、ぷるぷると首を横に振る。
アナベルは笑ってナイルの小さな頭を撫でると、ドライフルーツの袋を片手に、部屋を出た。
まだ朝早いので、生徒たちの大半は眠っている。
アナベルは静かに寮を出て、森へ向かった。
途中、ピーブスに出くわしたので挨拶したのだが…なぜか嫌そうな顔で、即消えられてしまった。
「なんでかなぁ…。」
ピーブスに会うといつもこうだと、アナベルは歩きながら小首をかしげる。
このハシバミ色の目をした少女は知る由もなかったが、
実を言えば、ピーブスは初めて目にした時から、
どうも、この優しいとしか言いようのないオーラを纏うグリフィンドール生が苦手だったりするのだ。
それに、もし仮にだ。
他の生徒にするように、この少女に悪戯を仕掛けたりしたなら、
この少女の厄介な恋人から、とんでもない報復を受けるに違いないとも、ピーブスは承知していた。
基本的に、壁も意味をなさないゴーストは、大半の生徒たちよりも情報通なのである。