第3部

□第15の枝 見えない警備体制
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が、残念ながらさすがのドラコも今この場にはおらず、アナベルは微かに微笑んだ。



 「どちらに行かれるんですか?船に戻られるとか?」


 「そうそう。案内してくれるかな?悪いね。」



少年はアナベルの微かな笑顔に、へらりと相好を崩す。




 (いやぁ、噂通り。可愛い子だなぁ…。)




ホグワーツの生徒たちは初めて見る他校生に興味深々だったが、それはダームストラングでも同じこと。

城の中や生徒のことをあれこれ言い合うダームストラング生の間では、
ホグワーツに人目を引く美しい少女がいるというのも噂されていた。

光を閉じ込めた様な長く美しいブラウンの髪が目印で、ひどく優しげな雰囲気をした少女だとか。


そんな噂を確かめてみたい気になって、偶に目撃証言のあったこの朝の中庭を歩いていたのだが…
本日、うまいことその噂の少女に出くわした次第だった。




 (俺って、ラッキー。)



自分の運のよさを自画自賛しつつ、少年はハシバミ色の目の少女の隣に並んだ。

で、船に案内してもらうついでに、朝食にでも誘おうと、
そんな魂胆を胸に歩き出そうとした…………のだが、しかし。




 「ちょ、ちょっと、待った!!」




ガシッ!!といきなり後ろから手がのびてきて、そのダームストラングの少年は飛び上がってしまった。

些か必死のその声に、アナベルも驚いて振り返る。



 「はぁ、はぁ、はぁ…。」



息を切らせ、間に合った!みたいな顔をしていたのは、
見たところ5年生か6年生くらいの、スリザリンの少年だった。

見ると、そのローブに監督生のバッジが光っていて、アナベルは早朝見回りの監督生かと思い当る。



 「や、やあ。えーっと、Ms.ポッター。だよね?」 


 「あ、はい。私のこと、知ってらっしゃるんですか?」



アナベルの方は、その監督生に見覚えがない。

少し驚いたように目を瞬かせると、そのスリザリン生はどこか引き攣った様な笑みを浮かべた。



 「ああ、まあ、君はほら、有名というか…。」



そう言葉を濁し、スリザリン生は咳ばらいをしながら、
状況を見るように2人の顔を見比べている、ダームストラング生に向き直った。



 「えー、ダームストラングの方ですね?僕が、船までお送りしましょう。」


 「ええ!?いや、俺はこの子に…。」


 「まあまあ、遠慮なく!」



全く有難くない申し出に、ダームストラングの少年は慌てて断わり掛けたのだが、
スリザリンの監督生はその言葉を笑顔で遮って、少年の肩に手を置いた。

同時に、すかさずアナベルと少年の間に体を入れて、2人の間を遮った。

アナベルはきょとんとしている。



 「Ms.ポッターは、もう戻った方がいい。もうすぐみんな起き出すだろうし、朝食の時間になるし。」


 「え?あ、はい。でも…。」



果たして、自分が頼まれたことをこのスリザリン生にお願いしていいのだろうかと、
アナベルは少しばかり首をかしげたが、そこはやはりスリザリン生。


彼は、ダームストラングの少年が何か言うよりも早く、笑顔でスラスラと口を開いた。
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