第3部
□第16の枝 寮を越える少女(前篇)
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「はい、こっち向いて。」
「にゃー。」
「うん、傷は治ってるわね。じゃあ、前足をちょっとみせてね。」
「にゃー。」
「よし、大丈夫そう。あ、後ろ足を動かしてみてくれる?」
「にゃー。」
「「「………………。」」」
真剣な表情でソファに座り、膝に乗せた巨大な猫の体を診察しているハシバミ色の目の少女。
無論、それはアナベル・ポッターで、
その様子を見守っていた猫の飼い主ハーマイオニーとロン、ジニーは、
アナベルの言葉に逐一素直に従って、
前足を出したり後ろ足を動かしたりしているクルックシャンクスを、驚きの目で見つめていた。
「………アナベル、すげえ。」
思わず、ロンが一言。
飼い主であるハーマイオニーも、感心したように頷いた。
「あのクルックシャンクスがってところが、またね。
頑固なところがあるから、わたしが言っても聞いてくれないときもあるのに。」
「ていうか、言葉が通じてたりするの?」
ロンが誰にともなく聞いたが、ハーマイオニーもジニーも答えられない。
「さあ……。」
ただ、とりあえず、アナベル・ポッターという優しい少女が動物に好かれるというのは間違いのない事実だ。
つい最近、その力がドラゴンにまで有効であることを知ったハーマイオニーたちは、改めて感心する。
(が、このドラゴンの話題に触れると、今でもハリーが気絶しそうになるので誰も口には出さないことにしていた。)