第3部

□第16の枝 寮を越える少女(前篇)
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 「はい、おしまい。いい子だったわね。」



と、その時、アナベルが微笑んで優しい声をあげた。

よしよしと猫を撫でてから、ハーマイオニーににこりと笑い掛ける。



 「お待たせしました、ハーマイオニー先輩。
クルックシャンクスの怪我はもう完治していますよ。打撲傷も治ってます。」



満足げに喉を鳴らして暖炉の傍に座りこんだ猫を見ながらそう報告すれば、
ハーマイオニーはほっとした顔をした。



 「ああ、よかった!本当にありがとう、アナベル。あなたがいてくれて助かったわ。」



アナベル以外で、動物の治療ができるのはハグリットくらいだが、
ハグリットだと、クルックシャンクスはこうも大人しくはしていないだろう。

ハーマイオニーはよかったと繰り返しながら、クルックシャンクスを(やや苦労して)膝に乗せた。



 「この子が苛められて怪我したって聞いた時は、ほんとどうしようかと思ったわ。」



数日前、そんな事情を説明して、
アナベルが、すでに治療済みのクルックシャンクスを連れてきた時のことが思い出される。

ハーマイオニーがため息交じりにそう言えば、ロンも蛙チョコの包みをガサガサ開けながら、しかめ面をした。



 「ほんとだよ。むしろ、呪いとかかけられてなくてよかったよな。」


 「猫を虐めるなんて、最低だわ!」



アナベルが医療ポーチを片付けている横で、猫好きのジニーも力を込めて頷いた。

ハーマイオニーはクルックシャンクスのたっぷりとしたふわふわの毛を撫でながら、眉根を寄せて考え込んだ。



 「でも、このままにはしておけないわね。許せない!
ねえ、アナベル、その犯人たちスリザリン生だったって言ったわよね?」


 「え?ええと…はい。」



食べ掛けのドライフルーツの包みを開けていたアナベルは、
ハーマイオニーにそう聞かれて、反射的に肩を揺らしてしまった。


怪我をしたクルックシャンクスを助けて、アナベルの元へ連れてきたのは、ドラコだ。

そのことが言えない限り、気を付けて受け答えをしないといけない。
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