第3部
□第16の枝 寮を越える少女(前篇)
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ハーマイオニーはそんな優しげな少女と愛猫を見下ろしながら、微笑みつつも難しい顔をする。
「うーん…助けてくれた人には、なんとかお礼をしたいんだけど。
今は、それよりも苛めた奴らへの報復よね。」
「そうだよ!見つけ出して呪いでもかけてやればいいのさ!」
秀才のハーマイオニーならできるだろうと、ロンが蛙チョコをもぐもぐしながらたきつける。
しかし、ハーマイオニーはとんでもない!と首を振った。
「アナベルは現場を見てないんだから、その犯人たちの顔なんて知らないし、どうやって見つけるのよ。
それに仮に特定できたとしても、呪いなんてダメよ。校則違反だし。」
「おいおい、ハーマイオニー!こんなときくらい、校則なんて忘れてもいいじゃないか。
それに、相手はあのスリザリン生なんだぜ?」
呪いくらいかけてやって丁度いいさ!と勢いよく言うロンに、ジニーも頷き、ハーマイオニーは曖昧に唸る。
反対に、アナベルは少しばかり顔を曇らせていた。
『あの』スリザリン生だとか、『あの』グリフィンドール生だとか、そういう表現は好きではない。
別に、クルックシャンクスの件だって、彼らがスリザリン生だから猫を苛めたというわけではないのだから。
(どうして、みんなよく寮絡みで物事を考えるのかしら。お兄ちゃんもそうだけど。)
アナベルは、クイディッチの練習で今ここにはいない兄の姿を思い浮かべる。
そんなことを考えている少女の横で、ハーマイオニーは尚も対応策を考えていた。
「うーん…とりあえず、スリザリンの監督生に文句言ってやろうかしら。
だって、犯人がスリザリン生だってわかってるんだから、明らかにあいつらの監督不届きだわ。」
『スリザリンの監督生』と聞いて、再びピクリとアナベルの肩が揺れる。
しかし、誰もそれには気づかない。
「そうだそうだ、言ってやれよ、ハーマイオニー!まあ、言っても無駄な気はするけど。」
ロンは煽っておきながら、いかにも嫌そうに顔をしかめた。
「だってさ、僕らと同い年のスリザリンの監督生って言ったら、あのマルフォイだぜ?何言ったって無駄さ。」
「あら、そんなことないわ!ぴしゃっと言ってやるわよ!」
明らかに向こうに落ち度があるんだし!とハーマイオニーは勢い込んだ。
そのどこかマクゴナガルに似ている表情を見ながら、ロンは肩をすくめて蛙チョコを齧る。