第3部

□第17の枝 寮を越える少女(後篇)
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何かショックを受けたように顔を青くして、懸命に泣くまいとしている少女を前に、
スリザリンの上級生は困っていたが………その視界に、ちらりと黒いものが入ってきた。



 「…ん?」



あれは。

顔をあげれば、少し先を横切っているのは、我らがスリザリンの寮監だった。



 (…スネイプ先生かぁ。助けを求めたいけど…この子、グリフィンドール生だからな。)



下手すれば自分よりもグリフィンドール生が嫌いなんじゃないかと思える教授、セブルス・スネイプの登場に、
上級生は声をかけて助けを求めるべきか躊躇する。


だが、彼がそれ以上悩む必要はなかった。



 「!?」



遠くから、たまたまちらりとこちらに目をやった教授が、ピタッ!と足を止め、
一瞬固まった後、物凄い勢いでこちらにやってきたからだ。



 「Ms.マルフォイ!一体、どうしたのだ?」



遠くから見ても、それがいつもの優しく元気で穏やかなアナベル・ポッターでないことがわかったのだろう。

そのせいで、少々焦ってしまったのか、スネイプはものの見事にアナベルをMs.マルフォイと呼んでいた。



 「スネイプ先生…。」



近くまで来たスネイプは、そのアナベルのハシバミ色の瞳に涙が溜まっているのを見て、
再び、ビタリと足を止める。

そして、物凄い勢いで、その隣のスリザリンの上級生の胸倉をつかみ上げた。




 「……………おまえか。この子を泣かせたのは。」


 「ひぃ!!」




地を這うような低い声。

深い眉間のしわ。

額に浮いた青筋。

ギリギリ首元を締めつける意外に強い握力。



どれを取っても最高に恐ろしく、上級生は思わず喉の奥で悲鳴を上げる。

慌てたのはアナベルで、急いで涙をごしごし拭い、2人の間に割って入った。



 「ち、違うんです、スネイプ先生!この方は、私に親切にして下さっただけで…。」


 「では、なぜ泣いているのだね?」



一先ずガクガク震えている上級生から手を離しつつ、スネイプは眉間のしわを深くした。


誰だろうと、その原因になった人間を許してはおけない。

目の前の少女は、大事なドラコの大事な恋人だ。

おまけに、それを差し引いても、
誰にでも優しいこの穏やかな少女を泣かせたとあっては、とても放っておけるものではない。


アナベルは、スネイプの問いに俯いてしまったが、
代わりに、(スネイプから十分距離を取った)スリザリンの上級生が恐る恐る口を挟んだ。



 「俺も聞いたんですけど、そのときは『ちょっと嫌なことがあった』って言ってましたよ。」


 「嫌なこと?」



それを聞いたスネイプと上級生に、揃って視線を向けられ、
アナベルは口ごもりながらも、先ほどの出来事を話すことになった。
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