第3部

□第17の枝 寮を越える少女(後篇)
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具体的な悪口は省いたが、
猫の苛めの件からスリザリン生への批評を簡単にまとめて話せば、見事に目の前の上級生は顔をしかめた。



 「なんだと?あのグリフィンドールの奴ら…むぐ!?」



思わず罵ろうとした口を、見えない手が塞ぐ。

変な声をあげ、目を白黒させている上級生の隣に立ったスネイプが、
さりげない動作で組んだ腕の先で、杖を握っていた。



 (ここでまたグリフィンドールの悪口なんぞ言ったら、とんだ悪循環だ。)



それがわからんのかと、スネイプは心中でため息をつきながら、目を潤ませて俯いている少女を見下ろした。



 「…なるほど。それでショックを受けて飛び出してきたというわけですな。」


 「はい…。私、びっくりしてしまって。」



ハーマイオニーもロンも、兄ハリーの親しい友人で、アナベルにもよくしてくれている。
そんな人たちが、まさか、あんなことを言うとは考えもしていなかった。

そのせいでショックが大きかったのだと自分でもわかっていた。


無言でまた俯いてしまったアナベルを見下ろし、スネイプは難しい顔をする。



 「ふむ…まあ、グリフィンドールとスリザリンの仲の悪さは今に始まったことではない。
君は、性格的にうまく流せんだろうが…。」



そう言いながら、スネイプは心中で、自分にため息をついた。

自分は口下手だ。
おまけに、人を慰めるなどという行為に慣れていない。


どんな言葉をかけてやればいいやらわからず、
スネイプは早急に、この少女の恋人を連れてきてやるのが最善だろうと判断する。

そう思ったのだが、それでも、アナベルはスネイプの言葉に微かに苦笑していた。



 「本当ですね。どうして、こんなにグリフィンドールとスリザリンの人たちって仲が悪いんでしょう。」


 「「……。」」



悲しそうにため息をつく少女の前で、過去と現役のスリザリン生2人が沈黙する。

この優しい少女には悪かったが、どちらもグリフィンドール生を嫌った経験は豊富にあったのだ。




 「まぁ…ほら、あいつらすぐ純血主義のこと否定するじゃん。」



スネイプの無言呪文が解けていることを確かめて、上級生がそう言ってみた。

アナベルは溜まった涙をハンカチで拭いとりながら、微かに首をかしげてみせる。



 「でも、それはグリフィンドール生全員ってわけじゃないでしょう?
まあ、なんでもすぐに否定するのはダメですよね。相手だって、腹立たしいでしょうし。」



そう言いながら、アナベルはぼんやりとハンカチを直し込んだ。



 「みんな、なぜか寮に固執し過ぎな気もするんですよね。
組分けだって、とりあえずどの寮がふさわしいか判断するって歌ってますけど、それだって曖昧なものでしょう?

必ずしも、スリザリン気質の人がスリザリンに入るってわけじゃないのに。」


 「………え?そうなの?」



ぼやく少女の言葉に、思わず間の抜けた声をあげてしまった上級生は、
目を瞬かせて、スリザリン寮監を見上げる。

スネイプはとりあえず、少女の言葉を黙って聞いていた。
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