第3部
□第18の枝 昼下がりの目撃者
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「ごめんね、もぞもぞするわよね。でも、それをあなたの飼い主さんに渡して欲しいの。
いきなりあなたが包帯巻いてたら、びっくりするでしょう?よろしくね。」
アナベルがそう説明すれば、三毛猫はうんうんと理解したかのように鳴いて、ととっ…と歩いて行った。
それを笑って見送り、アナベルは立ち上がってうーんと伸びをする。
廊下で怪我をした猫に出くわしたので、そのままそこで治療していたのだが足が凝ってしまった。
「さてと。どうしようかな。今から行って間に合うかなぁ…。」
ちらり…と廊下の窓から外を眺める。
そこからでも、第二の課題の為に特設された客席がなんとか見えた。
アナベルも最初は兄のハリーやジニーたちと第二の課題を見に行くつもりだったのだが、
その途中で先ほどの三毛猫に会い、怪我してをしているのがわかって、ハリーたちだけで行ってもらうことにしたのだ。
治療した後、間に合いそうなら行くからと言っておいたが…どうだろう。
「うーん…。」
アナベルが窓の外を眺めたまま、考え込んでいた時。
ふと、背後から肩にぽんと手が置かれ、アナベルは驚いて振り返った。
「こんなところで何してるんだ、お姫様?」
「あっ、ドラコ先輩!」
そこに立っていたのはプラチナブロンドの少年で、
アナベルは思わぬ遭遇に、ぱっとそのハシバミ色の目を輝かせた。
「先輩、どうしてここに?」
他の生徒たちのように、第二の課題を見に行ったのでは?と首をかしげるアナベルに、
ドラコは笑って、その白い頬に軽く口づけを贈った。
こんな廊下の真ん中で…とアナベルは一瞬焦ったが、よく考えなくとも今城内に人気はない。
頬を染めつつも微笑めば、ドラコも笑って、アナベルの頭を撫でた。
「いや、第二の課題を見てたんだけどな。
グリフィンドールの観客席にベルがいないから、何かあったのかと思って戻ってきたんだ。」
「え…あっ、そうだったんですか?」
自分を心配してわざわざ戻ってきてくれたのだと知って、アナベルは申し訳なくなってしまった。
「ごめんなさい、怪我をした猫ちゃんがいたものだから…。」
「だろうと思ったよ。来る時、そこで包帯巻いたご機嫌の三毛猫とすれ違ったからな。」
ドラコは思わず、笑ってしまった。
アナベルと会ったあとの動物はすぐにわかる。
怪我をしていても高確率で、機嫌がよさそうな顔をしているからだ。
まあ、この優しく美しい少女に会えば、誰だって機嫌は良くなるだろう。
自分も例外ではないと自覚しながら、ドラコはこれ幸いと愛しい恋人を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。