第3部

□第19の枝 未来予想
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 (……………………………やっぱりね!)




やっぱりでした。

美しいボーバトン生の前に立っていたのは、我らがMr.スリザリン、ドラコ・マルフォイだった。

美人を前にしても少しも表情を動かさず、
いつもの冷たいアイスブルーの目で、素っ気なく相手を見返している。



 (なんだよ、やっぱりおまえかよぉ…。はいはい、ホグワーツでもボーバトンでもよくおモテになるこって。)



なんで女子ときたら、あんなにドラコのことが好きなのだろう。

まあ、確かに顔もスタイルもいいが、怖いとか思わないのだろうか?
特に、あの冷やかなアイスブルーの目とか。怖いよ。


少なくとも、俺は怖いと思うけど…とベイジーが心の中で呟いているうちに、
そのボーバトン生はショックから立ち直ったらしい。

今度は、訳を聞く声が聞こえてきた。



 「…どうして?わたしじゃ、ご不満?」



その声音からは、彼女が自分の美しい容姿をきっちり自覚している様子が伝わってくる。

まあ、あれだけ美人ならなとベイジーは思ったのだが、ドラコの返事はどこまでも素っ気なかった。



 「もう恋人がいる。」


 「あら、そうなの。その子、わたしより綺麗な子?」



そこで悪戯っぽい笑みを浮かべて見せる辺りは、さすがだ。
(この場にザビニがいたら、『その小悪魔風味、80点!』とでも叫んだかもしれない。)

少なくとも、そう簡単に諦める気はないらしいとベイジーは察した。

さて、ドラコはなんと答えるだろうかと思ったが、ドラコは誰が何を思うよりも早く返答する。



 「ああ、もちろん。」


 「…もちろん?」



あまりの即答に、さすがにボーバトンの女子も声が引き攣った。



 「もちろん…何?わたしより綺麗ってこと?」


 「そう言ったつもりだが?」



皮肉でもなく、普通に怪訝そうなドラコの声が聞こえた。

一瞬喧嘩売ってるのかと思ったベイジーも、その声音で気付いた。
ああ、なんだ。惚気か。


きっと今、ドラコの頭の中にはあの美しいハシバミ色の目の少女が浮かんでいるのだろう。

ベイジーも、記憶の中からドラコ・マルフォイの意外すぎる恋人の映像を引っ張り出した。
(あまりしげしげ見つめているとドラコに粛清されるので、正面から直視した記憶はかなり少なかった。)



光を閉じ込めたような、流れるミルクティーブラウンの艶やかな髪。優しさの滲むハシバミ色の大きな瞳。
白い肌、愛らしい顔立ち。華奢そうに見えてスタイルのいい肢体。

性格なのかまだ幼いからか、ドラコの恋人アナベル・ポッターが化粧をしているところは見たことがなかったが、
誰が見ても、そっちの方がいいと言うだろう。



ベイジーはしげしげと、頭の中のアナベル・ポッターと、目の前のボーバトンの美人女子生徒を見比べてみた。

確かに、どちらも美人に分類される。
が、その実、彼女たちの美しさは全く別物だ。



 (うーん……なんて言ったらいいんだろうな。)



美人好きの友人ザビニならともかくも、ベイジーにはなかなか的確にその差を表現する語彙がなかった。

目の前のボーバトン生は、美人だったが、いうなればただの美人。
アナベル・ポッターは美しくもあり、愛らしくもあり…なんだろう、天使とでも言えばいいのだろうか。

なにより、特筆すべきは、彼女の容姿よりも彼女の纏うそのオーラなのだろう。



 (ほんと、優しいって感じだもんな。)



あのドラコ・マルフォイでさえ、夢中になるのも無理はないと…そう思えるような。
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