第3部
□第26の枝 不法侵入者と命懸け鬼ごっこ(後篇)
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「なんだと!?!?」
思わず我が耳を疑ったスネイプだったが、
そこはさすが、今まで数々の困難を乗り越えてきた苦労性…否、勇敢なる教授。
スネイプはすぐさま羽ペンを放り出して、部屋を走り出た。
「とりあえず、ジェームズ・ポッター、ドラコ、アナベルたちの現在地の確認を急げ。
それから、マクゴナガル教授へ連絡を入れろ。
教師たちには事情を知られずに、不法侵入者を追い掛けさせるんだ。」
「「「「はい!」」」」
てきぱきと具体的な指令を下すスネイプに、
親馬鹿の勢いに委縮していたスリザリン生たちも、一斉に動き出した。
で、命令通り、一部のスリザリン生たちは、
これまた、自室で仕事を進めていたミネルバ・マクゴナガル教授のもとへ走った。
「マクゴナガル先生!!大変です!!
不法侵入者が、何事か叫びながらホグワーツ中を走り回ってます!!」
「なんて!?!?」
さすがのマクゴナガルも、予想外…というか想像だにしなかった事態だったらしい。
常にない言葉遣いで聞き返したものの、彼女の自室は地下よりは音の伝わりがよく、
実際に聞こえる叫び声と生徒たちの騒ぎに、大慌てで立ち上がった。
「不法侵入者ですって!?杖を持ってるの?犯罪者?
とにかく、他の教授たちをお集めなさい!捕まえますよ!」
「「「よろしくお願いします!!」」」
とにかく、一刻も早く不法侵入者を捕まえなければと言うマクゴナガルに、
スリザリン生たちは、よし!と心の中で頷きながら、
言われた通り、他の教授たちを呼びに走ったのである。
その間も、親馬鹿は休むことなく、アナベルを探している。
一方で、同じく妹命の過保護な兄は、どうしているのかというと――――意外というか、当然というか、やっとというか。
さすがに、このジェームズの様子に引いて、自分の行動を振り返っていた。
クリスマスまであと2日。
妹を交代で警備するというのは、当初の予定通りだったのだが、
アナベルが部屋にいないとわかった時点で、
今この瞬間にも、下心満点の男どもに狙われているのではと、
叫びながら、走り出て行った父親に、
まさか、自分もあんな風になっているのだろうか…と考えさせられていた。
「………………………ねえ、ロン。正直に答えて欲しんだけど、僕って過保護?」
「うん、過保護だね。」
「シスコンの域?」
「うん、シスコンだと思う。」
「病気かな?」
「ハリーのパパの方は、もう病気だね。でも、ハリーはまだ手遅れじゃないはずだよ。」
妹命のハリーを、なんとかあの父親の域まで達することなく正気に戻す。
その千載一遇のチャンスの匂いをかぎ取って、
ロンはハーマイオニーの協力のもと、友人のカウンセリングに挑んでいたりした。
もちろん、その間も、親馬鹿は休むことなくアナベルを探している。
では、探されているその本人、アナベルはどこにいるのか。
どこにいるのかと言われれば、
その天使と呼び称される少女は、愛しのプラチナブロンドの恋人の腕の中にいた。
で、そのプラチナブロンドの恋人はといえば、必死に走っていた。
それはもう、必死に。